novel
□予感
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一言一句、という訳にはいかないが、シカマルの言葉はたしかに、
私の心の奥の方へ、奥の方へと進んでいき、何処かに引っ掛かったようだ。
やがてそれに違和感を感じなくなったときに、私の生き方は少し、変わるのかもしれないと思う。
「お前は」
ためらいはあったが、聞いてみる。
「お前は未来のこととか、考えたりするのか」
「んーまあガキの頃とはさすがに違うけどな」
「ふーん」
とか、興味のないふりをする私を、彼はどう思っているのだろうか。
「その未来に、
私は?」
私の問いに、シカマルは驚いたようだった。
照れたように視線を泳がせて、
やがて何か決心したように、私をまっすぐ見て、
「居る」
と言う。
私はそれだけで安心する。
たくさんある未来の可能性のひとつに私も入っているのだということに。
そこに私を置いてくれるひとがあるということに。
「それなら、
私も見たいな」
「え」
「お前の居る未来なら」
「そりゃ、どーも」
シカマルがまた、視線を泳がせながら、言う。
そのとき、私にはひとつの未来が見えた気がした。
どんなものだったか、すぐに忘れてしまったけれど、
そこにはきっと、見慣れたその表情が、あるのだろう。
end