novel
□around
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それでも、分かっていることも幾つかはある。
カンクロウと俺との間にある距離よりも、
テマリとの間にある距離は長い。
テマリもそう思っているだろう。
だが、俺はそのことに気づいてはいても、
どうしたらいいのか、自分がどうしたいのかも分からない。
お互いに触れるか触れないか、同じ距離を行ったり来たりしているように思う。
もし、
あと一歩近くへ入って行けるのなら、
それは周りから、何か別の力が加わったときだろう。
などと、妙に物理的なことさえ考える。
らしくない、と思いながら立ち上がる。
これ以上居ても邪魔になるだけだ。
テマリだってまだ少し眠っていたいだろう。
ふと気づくと、
テマリは笑顔でこちらを見ていた。
それは気のせいかもしれないが、カンクロウに見せるものに少し似ているような。
俺が何も反応できずにいると、テマリはとうとう吹き出した。
小さくだが、声を上げて笑っている。
俺はそれを、
はじめて見た。
遠くで見たことはあったかもしれない。
でもその笑顔が俺に向けられていることは、なかった。