novel
□曇天
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俺がそのくすぐったいような感じに負けて目を逸らした瞬間、
テマリが俺の頭を抱え込む。
乱暴に撫でられると、ちょっと、いやかなり痛い。
「お・・まえなぁ」
抗議の声は届きはしない。
分かっているけど、一応言ってみる。
「そーいうことは、もっと優しくしろよ」
「この方がいいこともある」
「何だよそれ」
勝ち誇ったように
「その内分かる」
と言うテマリを見ていると、
先程まで感じていた”不調”みたいなものが、
消えていることに気づく。
これは荒療治、というやつか。
テマリは俺の表情をよく読む。
”表に出さないようにしている顔”も、
たぶんこのひとにとっては
”不機嫌な顔”
でしかない。
俺はテマリのことを、
どうしていつも”ふつう”なのか
なんて思っていたのに。
そして、俺が放っておいて欲しいと、そう思うときに限って、
このひとはそれをしないでいてくれる。
それはとても難しい。
俺はテマリに欝陶しいと感じられることが怖いから、できないだろう。