novel

□共鳴
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なあ、テマリ。

お前も、
そう思ってくれてるんだとしたら

俺は






「あれ」



「どうした?」



「聞こえる」






俺は耳鳴りのような、歌を口ずさんでいるような音を聞いた気がした。



それはテマリの中から、もしかしたら俺の中から聞こえてくる、
細い糸で綴られたようなやさしい音。



それが何だったのか、分からないけど、

今なら聞けると思って、俺は何度も飲み込んだ言葉をようやく口に出す。



「お前さ」

それでも、多少口ごもりながら。

「俺の何処が、良いんだよ」



テマリは驚いて瞬きを早くした。

でもそれは一瞬のことで、余裕のある笑みを浮かべると、ひとこと



「不安なんだ?」

と言う。



そーいう訳じゃないんだが、と返す言葉を考える。



だがそんな思考も、次の言葉で軽く一蹴されてしまう。






「可愛いよ、お前」






ごくわずかな時間、沈黙が流れた。

それは、俺が、テマリが何のことを言っているか分からなかったから。



分かってしまった途端、顔が熱を帯びていく。

自分が赤面していること自体にまた恥ずかしくなり、余計に熱くなる。



「な」



くすくす笑っているテマリを見て、急いで何か言おうとするが、うまく言葉が出て来ない。



「何、言ってんだよ訳分かんねー」



「お前が言えって言うから言ったんだ」



俺はそれ以上何も言えなくなって、テマリに背を向けてしまった。










 
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