novel
□mirror
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だけど、ひとつだけ分かっていることは、
その答えを探しながらも、私たちは生きて行かなければいけないということ。
勝手に命を断ったり、生きることを諦めるのは、許されないことだ。
私は、我愛羅に問う。
「生きるのがつらい?」
「たぶん」
分かっていたはずのその答えに、私は胸をえぐられるような痛みを感じた。
それは、今の我愛羅に比べればどれほどのものか。
私は
我愛羅を抱きしめたのは、生まれてはじめてだった。
まだ、こんなに小さい。
「お前だけじゃないんだよ、我愛羅」
決して正当化できはしないその問題が、重なって重なって、ほんとうのところ私たちは立っているのもやっとだ。
「忍だからってみんなが強い訳じゃない。
ひとりで背負いきれないものなら―――」
そこまで言ってから、私の中に後悔が生まれる。
(どうして、もっと早く言わなかった?)
これは、ずっとあった思いじゃないか。
私の奥の方に、息を潜めて眠っていたもの。
この子のかわりに死んだ母親や、変わってしまった周りの大人たちのことで、私の中に生まれた行き場のない怒りが邪魔していたのだ。
それは”恨み”と言う。
この子は何も悪くないのに、と、私の中で叫んでいるもうひとりの私の言葉を、いつも聞こえないフリをして遠ざけた。
我愛羅が、腕の中で微かに動いた。
驚いたのだろう。
私が泣くところを、見たことなどなかっただろうから。