novel
□mirror
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私がはじめてこの手を血に染めたのは、いつのことだったか。
その後数日間は全く眠れず、眠ったとしても、うなされて起きる。
周りの誰もがそんなことだと分かっていただろう。
でも、
当時の私は誰にも助けを求めることができなくて、
ひとりきりでただ、時間が忘れさせてくれるのを待った。
「俺は」
何か言いかけた我愛羅の肩に手を置く。
彼は、私なんか比べものにならないほどの大勢の人をその手にかけた。
私でさえ、殺されるかもしれないと思ったことが何度もある。
でも、私が恐れていたのは、我愛羅には、覚悟がなかったということ。
輪廻という言葉を私は信じない。
あったとしても、そんなものには意味がない。
死のあとには所詮、無しかない。
だから人を殺めるというのは、その存在を消してしまうことだと思う。
そしてその”無”ということと、無になる前の”人”であったもののことを、我愛羅は考えたこともなかっただろう。
それが恐かった。
気づいてしまったとき、どうなるか分からないから。
壊れてしまうかもしれないから。
そのときが来たら、私は、我愛羅を助けてあげられるかどうか、分からなかった。
たぶん、今がそのときで。
何を言えばいいのか、分からない。