novel
□かなわないこと
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(じゃあ、何が欲しいの?)
テマリにそう聞かれた気がして、
俺は、手を伸ばした。
目を見合わせたまま硬直していたテマリは、
俺の手がその頬に触れると、2、3回瞬きをした。
「これは、夢なのか?」
テマリが言う。
その目は不安そうに、色を強くしていた。
「そーだろ、どう考えても」
「そうか。それなら」
テマリがゆっくり立ち上がると、俺の手は自然に頬から離れた。
「目が醒めたとき、私は、泣いているんだろうな」
「そういうものなのか」
(俺にはそんな経験ないからな)
と、顔も名前も知らない、前にテマリを泣かせたことのある奴に少しだけ腹を立てる。
くだらない感情だと思っていたそれが、今では(不本意だが)理解の範疇にある。
そんなこと、このひとに会う前の俺は想像もしてなかった。
「おい、シカマル」