novel

□fantasy
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私はしばらくここに、
木ノ葉に滞在することになっている。


「じゃあ、また明日」


『また明日』


それは、私にとっては珍しい、別れの挨拶。



彼以外に使ったことはほとんどないだろう。


そう言って彼に背を向ける。


いつもは。



「お前さ」

焦ったように、彼は私を呼び止めた。

「時間ある?」

私が頷くと、

「ちょっと、急ぐぞ」

彼はそう言い、私の腕をつかんで駆け出した。




あ。
(はじめて、ちゃんと見たかもしれない)



と、私は思った。



抗議の声を上げるのも忘れて、夢中になる。



『はじめてちゃんと見たかもしれない』、
彼の背中を、追うのに。





今日は、風が強い。






私たちが止まったのは、里の近くの森に入ったところだった。



聞き慣れない音がする。



「水・・?」


「ああ」



息を切らしながらもう少し進むと、視界が開けた。



そこには、小さな川が流れていた。



落ちかけた陽が木々の間から差し込み、
水がそれを反射している。



光が、流れる。



私がその光景に見とれて言葉を失っていると、


「間に合ったな」


と、彼の声が聞こえた。


そして視界にはその後ろ姿が入ってくる。




私に見せたいと、
そう思ってくれたのだろうか。


私はその背中を見つめた。









 
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