novel

□mirror
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『mirror』 






あまり化粧が濃くてはいけない。
薄過ぎても子供だと侮られる。



心の中でだけ何度も呟きながら、鏡を見て明日の朝の私をイメージする。



弟が風影に就任してから、一月とちょっと。

未だ安定しない砂隠れの里には、それを快く思っていない者が多い。



(私が、脚を引っ張るわけには行かない)



知っているから。
私の弟が、風影になるためにどんなに自分を変えてきたか。



もうひとりの弟と私は、ほとんど中忍を通り越すようにして上忍に昇格した。

もう、誰も私たち姉弟のことを子供扱いはしない。

いや、してくれないという表現が正しいか。





我愛羅には、
その覚悟が、あるのだろうか?






コンコン、と、部屋の扉を叩く音がする。

「どうぞ」

私が言うと、ゆっくり扉は開き、我愛羅が顔を覗かせた。

「珍しいな」

私は今考えていたことを悟られないように、慎重に声をつくった。

我愛羅にはバレていないと思っておく。

「座って。何か飲む?」

適当な椅子に座りながら、我愛羅は首を振って、目を伏せた。

「我愛羅?」



「今までのことを、悔いたことはあるか」



言葉は少なかったけれど、何のことを言っているか私には充分過ぎるほど分かった。

静かで、弟にしてはとても弱々しい声だった。
私はあの平和な里で起こった事件を思い出す。



正確には、私たちが”起こした”。



私は明るくつとめようか一瞬迷い、それから、
何と答えようかについては一瞬だけでは分からなかった。



「ないと言えば、嘘になる」

考えた揚げ句、そう言った。





 
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