novel
□fantasy
1ページ/3ページ
『fantasy』
「何か、普通になってきたな段々」
後ろから聞こえてきた声に、私は振り返らずに言う。
「何が」
「お前といるのが」
私は、足を止めた。
小さく風が吹き過ぎる。
追い付いてきた彼の横顔に、
「どういう意味?」
と問う。
(ほんとうは、私もそう思うけど)
もしかしたら、少し、期待していたのかもしれない。
期待。
何に。
彼は曖昧に笑って、
「分かんねー」
と言った。
その後の道は、無言で歩いた。
道が分かっているときには、いつも私の少し後ろを彼が歩く。
何も言わずに時間を共有できることが、
彼の言う『普通になってきた』
だろうか。
それだけではないと思うのは、
私の勝手な思い上がり?
強い風が、私と彼の間を通り抜けた。