短編

□暴れ柳と紫のターバン
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クィレルは困っていた。天気がいいという理由で洗濯に出していターバンが事もあろうにスネイプ教授の暴れ柳にひっかかってしまったと言うのだ。屋敷しもべ妖精はキーキーと甲高い声を出しながら泣き喚いていた。

「申し訳ありません! 申し訳ありません! 私めがクィレル教授のターバンを飛ばしてしまったのです。私は悪いしもべ妖精でございます!!」

 クィレルは屋敷しもべ妖精の長い耳を優しくなでると
仕方がない──そうつぶやいて、一人掛けのソファからゆっくりと立ち上がった。
「私がスネイプ先生に許可をもらってくるよ、気にすることはないから」

クィレルは屋敷しもべ妖精に微笑んでからそっと足を踏み出した。



部屋を出てスネイプ教授の研究室の前へたどり着くと、ドアを2、3度叩いた。

誰かね──部屋の持ち主のひどく機嫌の悪くけだるそうなバリトンボイスにクィレルは苦笑しつつも、部屋へと足を踏み入れた。

「おやクイレル教授ではありませんか。我が輩に何の用事でしょうか」
 部屋に入ると、スネイプが、書類の積まれた机の傍に座りクィレルを眺めるスネイプと目があった。
「お忙しいところすみません」
 そう言って頭を下げるとスネイプはやつれた顔で書類へ視線を戻し書き始めた。

「忙しいとわかっているならおいでくださらなくて結構なのだが」

「はは、そう言われても困ります。私はあなたの許可をもらいに来たんです」

「許可? 一体なんの? もしや、我が輩の所有する物に何かしでかしたのではないでしょうな」
 
 机に目を向かわせつつスネイプはクィレルを見て溜息を吐いた。手の動きは止まり、体が椅子から離れる。クィレルは苦笑いを浮かべると近づいて来たスネイプの鬼のような形相に半歩ほど体を下げる。
「はぁまぁ、私のターバンが暴れ柳に引っかかってしまったんです、取りに行ってもよろし」
 
 クィレルが言葉を言い終わらないうちに大きな咳き込みが聞こえた。

「暴れ柳に? それはそれは」
「ははは……」
 スネイプは口の端を吊り上げ青白い顔でクィレルを睨む。

「しかし、奇遇ですな。我が輩も暴れ柳に用があるのです、まあクィレル教授お一人で行ってくだされば一番だが」

「ということは、取りに行ってもよろしいんですね」

「しかし、何かあっても困る我が輩も同伴いたしますが」

そういう会話があった後、二人は揃って暴れ柳のある学校の外れへと向かった。
外れに到着するとふたり揃って暴れ柳を止め、クィレルは木の一番先端に一反木綿のように舞うターバンを見つけそっと呼び寄せ呪文を唱えた。
手元にターバンが現れるやいなやほっとした顔をする。

「さて、では手伝いもしていただくことにしましょう」

「おやそんなこと聞いていなかったと思いますが……」

「まあ言ってはいませんでしたが、我が輩の暴れ柳にそれを引っ掛けたのはあなたですからなぁ。」

 スネイプは暴れ柳の枝を魔法で剪定しながら根の這った足元の悪い地面を諸共せず歩き回る。

その光景にため息を吐きつつもクィレルはスネイプに近づいた。

「何をすればいいんでしょう」
 首を傾げて根本を踏まないようにゆっくりとスネイプの前にたどり着く。

「枝集めでもしていただきましょうか」
 素っ気なく解かれた答えに

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