いばらの恋

□真っ暗
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「その村人達の末裔が造った古代の最終兵器、その名も“極楽の匣”」

「「「極楽の匣!!?」」」

「ちょっと待ってよ!極楽の匣って童話とかに出てくる、あの極楽の匣!!?」




声を揃え驚くメンバーに続き、顔を青ざめ自分の知っている“極楽の匣”について語りはじめるルーシィ。
童話に出てくるあの兵器が実在するのかと、ルーシィは額に汗を滲ませ言う。





『……実在するのよ。その兵器が』




いつもより低い声色の名無しさん。
そんな彼女は俯き、その感情の重苦しい声に全員がそちらに視線を向ける。




『最早、童話に出てくる極楽の匣とは意味が違う。アレは…世界を滅ぼすだけの兵器にすぎないっ』




切羽詰まった声を発する彼女は、全員の知る名無しさんではなく。
エルザ達の目に映るのは、哀しみや憎しみ、恐怖や絶望の渦巻いた世界に生きる者の目をした名無しさんの姿。





「落ち着いて名無しさん!!」

「どうしたと言うんだ、名無しさん」




ルーシィとエルザに押さえられ、我に返った名無しさんは一度皆を見渡し、一呼吸置くとゆっくりと口を開く。




『“極楽の匣”はマスターの言ったように月の者達の住む村に封印されている匣のこと。』



極楽の匣……

開ければ何でも願いが叶うという言い伝えがある匣。
その正体は、童話などに使用された実在する古代の最終兵器なのだという。



その正体は古代の最終兵器。入れられた人間をサトリという怪物に変え、鼠算式にサトリを生み出し最後は世界を滅ぼしてしまう。

サトリにされた人間は、二度と人には戻れない。そのせいで昔は幾つもの国が滅んだ。それを月の巫女が封印し、代々奉ってきた。





『言い伝えではこんなところかしら。あの匣はこの世界に災いしかもたらさない』

「世界を…滅ぼす」

「そんなモノを、奴らは何に使おうとしているんだ」





長く語られた匣の真実。童話の中の話が実在することに、恐怖する。
そんな恐ろしいモノが闇の手に落ちたら、と考える面々。





「話を聞く限り、兵器を月の巫女が封印したのならそれは、当然月の巫女にしか解けない。奴らはその月の巫女を狙うだろう」

「そっか!術者がいなければどうにも出来ないもんね」

「よし、だったらその月の巫女ってのを捜しに行こうぜ!」





頭の回転が早いエルザは、少しの情報から次なる奴らの動きを推測したエルザ。
それを聞いたルーシィやナツ達は席から立ち上がりやる気をみせる、その時、





「その必要はない」

「「『……!!?』」」





何処からともなく聞こえた声。すぐに警戒心が働いた皆は、一斉に身体を構える。
その瞬間、無数の爆発音がギルドの外から響き渡り、人々の悲鳴が木霊する。

そしてその被害は、ついにギルドまで。





「「きゃあっ!」」

「「うお…っ!!?」」



ギルドの扉が壊され、次々に繰り出される魔法に、ギルドはズタボロになり、黒煙に包まれた。




「、…おい」

「…あぁ。誰か来たぞ、気ぃ抜くなよ!」



焦げた匂いが漂う中、仲間以外の人間の匂いを嗅ぎつけ、一番早く我に返ったナツが声を上げる。
他の皆もナツとグレイの言葉でやっと我に返り、いつでも動けるよう身構えた。




「……」

「……」

「……」



皆に緊張が走る中、黒煙から五つの影がこちらに向かってゆっくりと近づいてきた。



『……、』

「なに…こいつら…!」



姿を現したのは、独特な印象を与える者たち。それぞれ躰の一部に同じ紋章が刻まれている。

さらに五人全員からは禍々しく、強大な魔力を感じる。
遂に相対した両軍。






 
 

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