黒い激情
□歪みきった心は・・・
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その日の部活終わりに赤司に呼ばれた黒子は体育館の裏へ向かう。
「なんの用ですか、赤司君。」
「あんまり、黄瀬を甘やかすな。あいつのためにならないぞ。」
そう言った彼の顔には笑みが浮かんでいる。しかしそれは、アルカイックスマイル、というものであろうか、表情が読み取ることが出来ない。
「見てたんですか・・・覗き見なんて悪趣味ですよ?」
黒子もまた、ポーカーフェイスを崩さない。
まるでお互いに腹の探り合いでもしているかのようだ。
「黄瀬君のため?ボクはボクのために動いていますよ。」
黒子はゾッとするような冷たい声で言った。
「黄瀬君がボク無しではいられなくなるように。」
「悪趣味、ね・・・。お前が僕のことをそう言えるのか?」
さも愉快だ、と赤司は肩を揺らし、クッと笑う。
黒子はそんな赤司のネクタイをぐいっと引っ張り自分の顔を近づけ、視線を逸らすこと無く紅い瞳を見つめた。
「キミも気付いているんでしょう?ボク達はこれからバラバラになっていく、ということに。」
キミは何も感じないでしょうけど、と付け足す。
「だから、その時に離れられないくらいに黄瀬君にボクを欲してほしいだけです。」
身も心も黄瀬君の全てがボクのものだ。たとえ赤司君でも邪魔はさせない。
「では、さようなら、赤司君。」
黒子はくるりと踵を返して歩いていった。
「テツヤが辞めるまであと1ヶ月、いや、2週間といったところか・・・」
また一つコマが盤上から落ちていく。しかし僕にはそんなこと、どうだっていい。そう自分に言い聞かせる。
「・・・勝ちが全てで僕達はもうテツヤが居なくても負けることはないのだから。」
不要となったコマを気にしているほどキャプテンの仕事は少なくない。
赤司は自らの気持ちに蓋をした。
目に見えない心などよりもはっきりと感じることのできる勝利をひたすらに渇望し続けていく。