黄色い幸福
□黄瀬君誕生日おめでとうございます。
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「彼シャツってエロいッスよね?」
なんの脈絡も無くいきなり話題を振られたボクは思わず手に持っていたジュースをこぼしてしまった。
机を拭こうとしたら、黄瀬君が、ボクの手からティッシュを取り上げる。
「いいッスよ、黒子っちはお客さんなんだから。」
「あっ、ありがとうござ・・・」
言い終わる前に気が付く。そもそもこぼす原因を作ったのは黄瀬君だということに。
「・・・で、彼シャツとやらがどうかしたんですか?」
「いやー、モデル仲間とこの前話したんスけど、シャツの上からわかるボディラインとか、大胆に見える脚とかサイコーじゃないっスか!」
すると黄瀬君は何やらゴソゴソと取り出してきた。なんだか嫌な予感しかしない。
「だから・・・、黒子っちコレ着てくださいッス!」
その手が持っているのはボクのものよりかなり大きい帝光中のシャツ。
「・・・いいですよ。」
「やっぱそうッスよね・・・、えっ!いいんスか!?」
普段のボクなら首を絶対に縦には振らないだろう。だが、今日は・・・。
「もうすぐキミの誕生日ですし、プレゼント、ということで。」
「マジッスか!てか、ずいぶんと安上がりなプレゼントッスね・・・。」
「今月のお小遣いシェイク代しか残ってないんです。」
「ねぇ、黒子っち、オレとシェイクどっちが好き?」
「さぁ、どうでしょうか。」
まぁ、プレゼントはとっくに買ってあるんですけどね。シェイクと黄瀬君は選べないくらいどっちも好きです。本人には恥ずかしいので直接言えないけれど。
「じゃあ、向こう見てるッス。」
「別にこっち見ててもいいですよ?」
「いや、そっちのが楽しみに待てるじゃないッスか。」
いざ、実際に着てみるとやはりだぼだぼである。なんだか体格の差を感じて哀しくなってきた。
「着替え終わりました。」
振り向いた黄瀬君の顔がぱあっと輝いた。
「黒子っち、チョーかわいいッス!」
キツく抱きしめられたので息が苦しい。
「ちょ、黄瀬君・・!?やめっ!」
あろうことか彼は指でシャツを捲り上げ内腿に手を添わせてくる。
「やめてって言ってるじゃないですか!」
ボクはモデルの顔に思い切りイグナイトをかました。
「いや、つい・・・黒子っちがかわいくて・・・。」
「つい、じゃありませんよ!こういうことはまだにしてくださいっていつも言ってるじゃないですか!」
「すんませんッス・・・」
しょんぼりと項垂れる黄瀬君はなんだか飼い主に冷たくされた犬のようだ、と感じた。可哀想に思えてきたので、その頭を撫でてやる。
「・・・キスまでならいいですよ。」
「マジッスか!?」
その喜びようから、まるでブンブンとしっぽを振っている幻視まで見えてくる。
甘い口付けを交わしながらボクの誕生日にはなにをプレゼントしてくれるのだろうか、と楽しみになっていった。