赤い誘惑
□独りぼっちのボク達
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「赤司君・・・今日、いいですか?」
「・・・ああ。」
部活帰りにボクが声を掛けたのは、同じレギュラーで、キャプテンの赤司君だった。
なんの言葉も交わさずに僕達は彼の家に向かった。
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「・・・思い切り痛くしてください。」
「・・・何かあったのか?」
「・・・。」
赤司君の問いかけにボクは無言を貫いた。赤司君もそれ以上追及してこなかった。
そう、これでいい。ボク達に言葉なんて、必要ない。お互いに自分の都合で相手の身体を求めるだけなのだから。
「・・んっ、」
愛や意味なんて、高尚なものは一切持たない、カタチだけの、キス。
身体を重ねることも、そうだ。ほんの少しの間苦しみから逃れようと快楽に身を任せる。
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「テツヤ、そろそろ起きろ。」
そうボクを呼ぶ声に目を覚ます。
どうやら、ボクは飛んでしまったらしい。
「悪い、無理をさせた。」
「いえ、ボクが頼んだことですから。」
ベッドのそばに落ちている、ワイシャツを拾い上げ、袖を通す。
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いつからだろうか?こんな歪な関係になってしまったのは。
ボク達はお互いに違う孤独を感じているのだろう。ボクは存在意義を見失い、赤司君は独り何かに耐え、苦しんでいるように見える。
赤司君の目からこの世界はどう映っているのだろうか?全ての結果がわかり、どの選択をすればいいのかも見えているに違いない。羨ましい、と思う人もいるだろうが、もし、自分だったらと考えるとゾッとする。あんなにも人に囲まれているのに誰にも理解されないなんて。
「・・・かわいそうな人、ですね」
でも、ボクに彼は救えない。彼がボクを救えないように。