赤い誘惑

□相合傘
1ページ/3ページ

「また雨、か・・・」

季節は梅雨。朝晴れていたことが嘘のようにザアザアと雨が降っている。

雨は嫌いだ。どんよりとした天気を見ていると心まで鬱々とした気分になる。


**************


部活を終え、帰る支度をしていた黒子は、急に後ろから声を掛けられた。

「傘を忘れてしまったから、入れてくれないか?」

振り向くと部活のキャプテンで、黒子の恋人でもある赤司が立っていた。

「・・・珍しいですね、キミが傘を忘れるなんて。」

「そりゃあ僕も人間だからね。そんなこともあるさ。」


外に出ると、雨足は強くなるばかりで、一向に止みそうにない。

「傘は僕が持つよ。」

そう言って赤司は黒子から傘を取り上げた。

「べつにボクが持つのに・・・」

「テツヤより僕の方が身長が高いだろう。」

赤司の言葉に黒子はプゥと頬を膨らませる。

「キミとボクじゃあ、5センチくらいしか変わりませんよ。」

そんな黒子が可愛いくて赤司は思わす目を細めた。

「どうしたんですか、ニヤニヤして」

「いや、テツヤはよく表情が変わるなと思っただけだよ。」

周りの奴らは黒子のことを無表情だと言うが、赤司はそう感じたことはない。

「・・・そんなこと初めて言われました。」

「僕の前だけだからね。」

そう言って赤司は意地悪く笑った。

「本当にキミは・・・」

なんだか全てが赤司に知られているような気がして、照れてしまった黒子は話を逸らした。


「ところで赤司君は雨が好きですか?」

「あまり好きではないかな。」

黒子は少し残念そうな顔をした。

「僕は好きですよ。雨の音って落ち着きません?」

目を瞑り、耳を澄ませる黒子を真似して、目を閉じる。
聞こえてくるのは、絶え間無く続く、水が地面に落ちる音のみ。

「ね?安らぎませんか?」

赤司は、フッと笑った。

「やっぱりテツヤはどこか変わっているね。」

忙しい毎日の中で大抵の人間は雨の音など気にも留めないだろう。
だが、確かに落ち着く。テツヤが側にいるから、という状況だからかもしれないが。

「そうですかね?」

そう首を傾げる姿がとても愛しくて。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ