a shining flower〜水道魔導器編〜
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「ったく!あいつ一体なんなのよ!バカドラと手を組むなんて!」
「リタ落ち着いてよ。それどころじゃないでしょ。」
「がきんちょは黙ってなさい!!」
リタは、ユーリが自分の敵である竜使いとバルボスを追って行ってしまったのに、腹が立っているのである。その横では、椅子に縛り付けられたリクティスの縄を解くレイブンの姿があった。その顔は、何処か暗くそして怒りを感じるものであった。
「レ、レイブンさんありがとうございます・・」
「ん?ああ、良いってことよ!それよりも、ケガしてない?」
縛り付けられていた足や、手首は赤く腫れ上がっていた。そして、無理やり連れてこられたのであろう。ところどころに傷が目立つ。
「いま、治療しますね。」
そう言ってエステルは治癒術をリクティスにかけた。
「ありがとうエステル。」
「それよりも・・エステル。さっきの話本当なの?リクティスが上流貴族だなんて。」
「それは・・私も歴史学として学んだだけで、実際の事は・・」
すると、レイブンが涙目のリクティスの頭を撫でながらこう言った。
「・・俺様が知ってるのは、ジェイル・ラズリィの妻がギルド出身ってくらいだな・・」
「えっ!?そうなの!?」
「しかも、天の射る矢のね。元々貴族だったみたいだし、まあただ元の生活に戻っただけなんだと思うわよ。」
「でも、ラゴウのラズリィ家に対する因縁は凄まじいものみたいだったわね。そこから考えても、リクティスがその生き残りって考えてもいいんじゃない?」
いきなり狙われ、しかも貴族であると言われたリクティスは頭がパンクしてしまい言葉が出ない。自分は旅人の両親が病死し、下町で育てられたとばかり思っていた。しかし真実は、両親が貴族で、しかも殺害されたと言うのだから信じられないのも無理はない。
「でも、その一族殺害の事件って何年前なの?」
「確か・・人魔戦争の前だったような・・」
レイブンが、16年前よ。とカロルに教えた。
「それなら、リクティスは大きくても2歳・・記憶が無いのも無理ないか・・ってなんでおっさんそんなに詳しいのよ。」
「え?だって、お嫁さんが天の射る矢出身よ?話がどんどん伝わってくるのよ。」
これからどうしようか、とカロルが話を切り出した。
このままここにいても何もする事も無い。しかもラゴウがまだこのダングレストに潜んでいるかもしれない。それを考えるとリクティスをこの街において置くのは気が引ける。一方で、ユーリを追ってバルボスが向かったであろうガスファロストに行くのも危ないように感じる。
「わたしは・・ユーリの元に行きます。」
「え!?エステルひとりじゃ危ないよ!だったらボクもいく!」
「がきんちょにエステル任せらんないからわたしも行くわ。」
「ちょっと、青年に大人しくしてろって言われたでしょ?第一、リクティスちゃんはどうするのよ?」
レイブンの言葉に、3人は言葉が出なかった。すると、リクティスはわたしもガスファロストに行くと言い出した。
「何言ってんの!?あんた、バルボスに殺す宣言されてるのよ!?」
「でも、殺されなかった。」
「そ、それはたまたまバルボスの立場が危なくなったからであって・・」
「リタ、心配してくれてありがとう。でもね、わたしが仮にその一族の生き残りだとしても、わたしには変わらない。命が狙われたって、そうじゃなくたって、わたしの意思は変わらない。わたしは、大切な人が頑張っているのに、頑張ろうとしてるのに、ひとりで安全な場所にいるだなんて事、したくない!」
リクティスの強い意思に、そこにいる全員がもう反対する事はなかった。
すると、レイブンがバルボスの罪が明白である事をドンに知らせてくるとと言って先に部屋を後にした。
「リィ、ひとりで突っ走らないでくださいね。わたしたち、仲間です!」
「そうね。全力でフォローするわ。だからあんたも私達をフォローしなさいよ!」
「リクティスは強いけど、おっちょこちょいだからね、ボクに任せて!」
リクティスは3人にありがとうと言うと、椅子から立ち上がりレイブンの元へ行こうと言い出した。
「ラゴウ・・絶対に許しません。」
「エステルの力で、ラゴウを評議会から追い出せないの?」
「そうですね・・帝都に帰ったら掛け合ってみます。」
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