a shining flower〜水道魔導器編〜

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21.

レイブンからの情報を元に、北西へと進んで行くユーリ達。トリム港から遠ざかるにつれて、雲行きが怪しくなって行った。

「なんだか・・・雨が降りそう
。」
「こりゃ、一雨来そうだな・・・」

案の定、シトシトと雨が降ってきてしまった。カロルのいう廃墟の村へと辿り着いたが、そこは無法地帯であった。崩れた建物には苔が、その周りには大量の草が一面に生えており人がよりつくようなところではない。

「こりゃ、完璧に廃墟だな。」
「こんなところに、誰が来るっていうのよ!」

心なしか、いつも強気のリタの声が震えて聞こえて来た。

「またいい加減な情報、捕まされたかな・・」
「またって・・・もしかしてレイブン?」
「んまあ、そういう事だ。」

すると、気の強そうな女の子の声が近くから聞こえて来た。

「そこで止まれ!当地区は我ら『魔狩りの剣』により現在、完全封鎖中にある。」
「この声・・!?」

聞き覚えのある声に、カロルは目を丸くしながら顔を向けると、そこにはカロルと同い年くらいの大きな刃を持つブーメランを背負った女の子が崩れた建物の上に立っていた。

「これは、無力な部外者に被害を及ぼさないための措置だ。」
「ナン!」

カロルは、女の子をそう呼ぶとどこか嬉しそうな表情を見せた。

「よかった、やっと追いついたよ。」

そんなカロルとは裏腹に、ナンは何か言いたげそうな顔をしてカロルを見ていた。

「首領やティソンも一緒?ボクがいなくて大丈夫だった?」
「馴れ馴れしく話しかけてこないで。」
「冷たいな。少しはぐれただけなのに。」
「少しはぐれた?よくそんな嘘が言える!逃げ出したくせに!」
「逃げ出してなんかいないよ!」
「まだ言い訳するの?」
「言い訳じゃない!ちゃんとエッグベアを倒したんだよ!」
「それもウソね。」
「ほ、本当だよ!」

すると、ナンはむすっとしながら、しかし寂しそうな顔をしながらカロルに強く言った。

「せっかく魔狩りの剣に誘ってあげたのに・・今度は絶対に逃げないって言ったのはどこの誰よ!昔からいっつもそう!すぐに逃げ出して、どこのギルドも追い出されて・・・」

すると、カロルはみんなに聞かれたくなかったのであろう。大きな声を出してごまかそうとした。
しかし、その言葉はみんなに届いてしまい、みんなカロルに注目してしまった。

「・・・ふん!もう、あんたクビよ!」
「ま、待ってよ!」
「魔狩りの剣より忠告する。速やかに当地区より立ち去れ!従わぬ場合、我々はあなた方の命を保障しない。」

そう言って、ナンはその場を立ち去ってしまった。

「ナン!!」

カロルの言葉は、ナンに届くことはなかった。カロルの落ち込む姿に、リクティスもエステルも心が痛く声をかけてあげる事が出来なかった。

「それにしても、どうして魔狩りの剣とやらがここにいんだろうな。」
「さあね。」

すると、リタが廃墟の街に入ろうとしているのを、エステルが止めた。

「リタ、待ってください。忠告忘れたんですか?」
「入っちゃダメとは言ってなかったでしょ?」
「それはそうだけど・・命の保障はしないって・・・」
「あたしが、あんなガキに、どうにかされるとでも?冗談じゃないわ。」

そういうリタに、リクティスは何も言えなくなった。

「ま、とにかく紅の絆傭兵団の姿も見えないし、奥を調べてみようぜ。」

そう言って、ユーリ達は廃墟の街へと入って行った。


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