a shining flower〜水道魔導器編〜

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20.

フレンに助けられ、賑やかな港町に着いた。カロルが言うに、ここはトリム港と言うらしい。

「ありがとうございます。おかげで助かりました。」

ユーリが助けた男の子が、礼儀正しくお礼を言った。その落ち着いた雰囲気は、見た目以上の年齢を感じさせた。

「ね、こいつ、誰?」
「え、えっと、ですね・・・」

リタの質問にエステルが困惑していると、フレンが助け船を出した。

「今、宿を用意している。詳しい話はそちらで。それでいいね?」

フレンの問いかけに、ユーリは柔らかい顔をして頷いた。
そして、一同は宿に向かった。

「この街、すごく賑やかだね。さすが湊町って感じ。」
「うん、トリム港は、ギルド『幸福の市場』が中心となって治めているんだよ!」
「へー、ギルドで街を動かしてんのか。」

晴天で、カモメの鳴き声が聞こえるこの港町の雰囲気は、帝都では感じられない清々しいものであった。

「ユーリ、私、この街好きかも!」
「そうだな。リィの性格にあってるかもな。」
「ユーリもあってるよ!ねえ、風が気持ちいよ!」

そう言って、前を歩いているエステル達の方へリクティスは駆けていった。

「ったく。海に落ちたばっかだってのに・・本当、目が離せねえな。」

ユーリは右手を腰に当て、エステル達と笑い合うリクティスを微笑ましく遠くから見ていた。


宿屋につき、指定された部屋に入ると、そこには先ほどまで船に乗っていたラゴウがいた。

「こいつ・・・!」

リタがラゴウに噛み付こうとすると、ラゴウはしれっとした顔でみんなを見渡した。

「おや、どこかでお会いしましたかね?」
「船での事件がショックで、都合のいい記憶喪失か?いい治癒術師、紹介するぜ。」
「はて?記憶喪失も何も、あなたと会うのは、これがはじめてですよ?」

都合の良いことをいうラゴウに、みんな耳を疑った。

「何言ってんだよ!」
「執政官、あなたの罪は明白です。彼らがその一部始終を見ているのですから。」
「何度も申し上げた通り、名前を
った何者かが私を陥れようとしたのです。いやはや、迷惑な話ですよ。」
「ウソいうな!魔物のエサにされた人たちを、あたしはこの目で見たのよ!」

カロルとリタがそれぞれ反論するが、ラゴウは自信に満ちた顔をしていた。

「さあ、フレン殿、貴公はこのならず者と評議会の私とどちらを信じるのです?」
「フレン・・・」

ユーリはフレンの名を呼んだが、ラゴウの威圧が凄くフレンは何も言えなかった。

「決まりましたな。では、失礼しますよ。」

ラゴウは勝ち誇った顔をしてその場をあとにしようとした。






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