a shining flower〜水道魔導器編〜
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エフミドの丘を抜け、海沿いの街道を進むと活気のない港町についた。
「ここが・・ノール港?」
リクティスがそう呟くと、今まで晴れていた空が急に暗くなり雷雨をもたらした。
「・・・なんか急に天気が変わったな。」
「びしょびしょになる前に宿を探そうよ。」
カロルが大きなカバンを頭の上にかざしながら言い、宿を探しに行こうと歩き出した。しかしエステルは立ち止まったまま動こうとしない。
「エステル、どうした?」
「あ、その、港街というのはもっと活気のある場所だと思っていました・・・」
「私も。港街って色々な人が集まる場所だからいつもお祭り騒ぎなんだと思った・・・」
「確かに、想像してたのと全然違うな・・・」
「でも、あんたの探してる魔核ドロボウがいそうな感じよ」
リタは腕を組みながらユーリを横目で見た。
「デデッキってやつが向かったのはトリム港の方だぞ。」
「どっちも似たようなもんでしょ」
すると、カロルがその言葉に反応して全力で否定してきた。
「そんなことないよ。ノール港が厄介なだけだよ。」
「どういうことです?」
「ノール港はさ、帝国の圧力が・・「金の用意が出来ないときは、おまえらのガキがどうなるかよくわかっているよな?」」
すると、少し先の方で夫婦が男2人に土下座をしている姿が見えた。
「お役人様!!どうか、それだけは!息子だけは・・・返してください!この数ヶ月のあいだ、天候が悪く船も出せません。税金を払える状況でないことは、お役人様も、ご存知でしょう?」
「ならば、早くリブガロって魔物を捕まえてこい。」
「そうそう、あいつのツノを売れば一生分の税金納められるぜ。前もそう言っただろ?」
そういうと、役人達は不気味な笑みを浮かばせ立ち去って行った。
「なに、あの野蛮人。」
「ひどい・・同じ人とは思えない。」
リタとリクティスは顔を曇らせた。
「カロル、今のがノール港の厄介の種か?」
「うん、このカプア・ノールは帝国の威光がものすごく強いんだ。特に最近きた執政官は帝国でも結構な地位らしくてやりたい放題だって聞いたよ。」
すると、リタは声を暗くして言った。
「その部下の役人が横暴な真似しをしても、誰も文句が言えないってことね。」
「・・・」
「そんな・・・」
リクティスとエステが言葉を無くしていると、先ほど役人に絡まれていた男性が立ち上がり、町の外へ行こうとした。みると、身体中包帯だらけである。
「もうやめて、ティグル!そのケガでは・・・今度こそ貴方が死んじゃう!」
「だからって、俺が行かないとうちの子はどうなるんだ、ケラス!」
ティグルがケラスの忠告を無視して走ると、近くにいたユーリが足を掛けて転ばせた。
「痛ッ・・・あんた、何すんだ!」
「あ、悪ぃ、ひっかかっちまった。」
「もう!ユーリ!・・・ごめんなさい。今、治しますから。」
エステルがすぐにティグルの元へ行き治癒術を施した。
「あ、あの・・私たち払える治療費が・・」
「その前に言うことあんだろ。」
「え・・?」
ユーリの発言にケラスは言葉をなくした。
「まったく、金と一緒に常識まで搾り取られてんのか?」
「ご、ごめんなさい。ありがとうございます。」
すると、ユーリは近くの路地裏に誰かが入って行ったのが見えた。
「・・・」
ユーリは、こっそりとその人の後を追うため、その場を後にした。
それをリクティスは見ていたため、ユーリの後を追っていった。
「あれ?ユーリとリクティスは?」
「さあ、情報でも集めに行ったんじゃない?」