a shining flower〜水道魔導器編〜

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07.

階段を降りると、じめっとした地下水道へとでた。
そこは城の中とは打って変わり、ネズミ型の魔物が生息していた。

「こんなところにも、魔物がいやがるのな。」
「・・・魔物・・・あれが・・・」
「見たことないか・・・?」
「えと、あの・・・」

ユーリの質問に何故か焦り出すエステリーゼ。
すると、こちらに気がついたのだろう。魔物が近づいてきた。

「・・・っと、ちゃちゃっと片付けますか」
「ユーリさん、前からも・・・!」
「ちっ・・・厄介だな」

合わせて6匹くらいであろうか。大小様々な大きさのネズミ型魔物が一斉に襲ってきた。
しかし、地下水道に生息していただけであったためか基本争うことはないのであろう。その魔物はとても弱く数匹倒したら危機を感じたのであろう。さっさと逃げて行ってしまった。

「まっこんなもんか」
「いっぺんに襲われた時はどうなるかと思いました・・・」
「敵は各個撃破が先頭の基本だけど、たまにゃこういうのもある。」
「そうなんです?じゃ、気をつけて進んだ方がいいですね。」
「少ない敵を相手に確実に倒すか、いっぺんに多くの敵をなぎ倒すか、それは好みによるけどな。」
「ユーリさんはどっちなんですか?」
「どっちでもいいだろ?さ、いそぐぜ。」

そういうと、地下水道を歩き出し、出口を探しはじめた。
単純なつくりをしているように見えて、実は複雑なのもあり出るのには一苦労しそうである。

「地下の通路を教えてくれた人に感謝しなきゃいけませんね。」
「別にお前が感謝する必要はないんじゃないか。」
「わたしだって、外へ行きたかったんだから、あなたと同じです。」
「それならそれでいいんだけ。ど・・・なんでか、素直に感謝する気になれないんだよな。」

あの胡散臭いおっさん、ぜってーなんかあるよ。と小さい声で呟くユーリ。未だにアレクセイが出てきたことがひっかかるようである。

「ダメです、恩ある人にはちゃんとお礼しないと。」
「会ったこともない相手によくそう律儀になれるもんだな。」
「会ったことのない人だからこそ、礼を失してはいけません。」
「ふーん、そういうもんかね。」

そういうものです!と、エステリーゼはユーリにムキになった。お嬢様だからであろう。その辺りの作法には厳しいようである。
しかし、他の貴族とは違い人への感謝をしっかり口にするエステリーゼにユーリは少しむずがゆさを感じた。


さらに奥へと進んで行くと、上へと繋がる梯子を発見した。
ユーリが先に登り、上の蓋を開けると眩しい光が差し込んできた。

「うわ、まぶしっ・・・あーあ、もう朝かよ。一晩無駄にしたな。
・・・貴族街に繋がってんのか。」
「窓から見るのと、全然違って見えます」
「そりゃ大げさだな。城の外に来るのが、初めてみたいに聞こえるぞ。」
「・・・そ、それは・・・」

痛いところをつかれたエステリーゼは言葉が出てこなかった。それをフォローするようにユーリは、お城のお嬢様様は色々と大変だもんな。というと、エステリーゼは安心したかのように頷いた。

「ま、とりあえず脱出成功ってことで。」

ユーリはハイタッチをしようと手を出すが、エステリーゼは何を思ったのかユーリの手を人差し指でツンっとついた。

「あはは・・・」
「あ、あの、なにか間違えました?」
「いや・・・別に、な・・・」

常識知らずのお嬢様ってところか?と心の中で自分に言い聞かせ、ユーリは本題へと話題を変えた。

「・・・で、エステリーゼは、これからどうすんの?」
「フレンを追います。」

迷いのない目と声に、エステリーゼのフレンへの想いが痛いほどわかった。

「行き先知ってんのか?」
「先日、騎士の巡礼に出ると、話していましたから・・・」
「あ〜、あれか。帝国の街を回って、善行を積んでこいってやつ。」
「はい。だから、花の街ハルルを目指します。騎士の巡礼では最初にハルルへ行くのが慣わしですから。」
「となると、結界の外か・・・」

厄介だな。とユーリがボソッというと、エステリーゼが質問してした。

「ユーリさんは結界の外を旅したことあります?」
「少しの間だけならな。興味はあるけど、下町を留守にするわけにはいかないしね。オレも下町に戻るから、街の出口まで案内するよ。」
「ありがとうございます!」



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