a shining flower〜水道魔導器編〜

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06.

夜ということもあり、城内は不気味な程静まり返っている。
ユーリと女の子の足音だけが、コツンコツンと広く長い廊下に響き渡る。

「ん?なんかいい匂いがする。」
「あ、本当です、なんでしょう?」
「そういや、この辺に騎士食堂があったな。」

お、ここだ。と呟き、大きなドアを開けてユーリと女の子は食堂へと侵入した。
キッチンを覗くと、カレーが作り置きされていた。
それをユーリは味見をし、まあまあだな。と皮肉なコメントを付け加えた。

「ちょっと、ユーリさん!勝手に食べてはいけませんよ?」
「ん?ああ、わりぃ。朝からなんにも食ってないもんでね。さあ、フレンの部屋にでも行きますか。」

階段を上がり、また広く長い廊下を歩くユーリと女の子。
すると、女の子は立ち止まり辺りをキョロキョロしはじめた。

「この辺り・・・だったような・・・」
「あんたの立ってるそこがフレンの部屋だろ・・・?」

あ!そうでした!と女の子がいうと、ユーリは肩を落とし落胆した様子を見せた。
フレンの部屋に入ると、当本人は留守のようである。しかも、やたら部屋が片付いていて、生活感がない。

「やけに片付いてるな・・・
こりゃあ、フレンのやつどっかに遠出かもな。」
「そんな・・・間に合わなかった。」
「んで、一体どんな悪さやらかしたんだ?」
「どうして?わたし、何も悪いことなんてしてません」
「なのに騎士に追いまわされるのか?常識じゃ計れねえな、城ん中は。」

ははっとユーリは鼻で笑い、フレンのベッドの上に座った。
そして、これからの脱出経路をどうするか考えていると急に女の子が勢いよく話しかけてきた。

「あの!ユーリさん!」
「なんだよ急に。」
「詳しいことは言えませんけど、フレンの身が危険なんです!
わたし、それをフレンに伝えにいきたいんです。」
「行きたきゃ、行けばいいんじゃないのか?」
「それは・・・」
「俺にも急ぎの事情があってね外が落ち着いたら、下町に戻りたいんだよ。」

一刻も早く下町に戻りたいユーリ。本当であればフレンの部屋にはいかず真っ先に下町に戻りたかった。しかし、ほっとけない病が発動してしまい、今に至るのである。

「だったら、お願いします。
わたしも連れて行ってください。
今のわたしには、フレン以外に頼れる人がいないんです。
せめて、お城の外まで・・・
お願いします、助けてください。」
「わけありなのはわかったから、せめて名前くらい聞かせてくんない?」

突然ドアが倒れてきたと思いきや、入り口にはピンク髪の奇抜な男が立っていた。その男の目はまるで、獲物を狙うハイエナのようである。

「俺の刃のエサになれ」

そういって男は剣をふり、フレンの部屋の花瓶を割ってしまった。
本気のようである。

「ノックぐらいしろよな」

ベッドに座っていたユーリも立ち上がり戦闘体制に入った。

「オレはザギ・・・お前を殺す男の名、覚えておけ、死ね、フレン・シーフォ・・・!」



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