a shining flower〜水道魔導器編〜

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04.

貴族街に続く門で騎士が2人見張りをしていた。
ユーリは見つからないように低木に身を潜め、騎士たちの様子を伺っていると、暇なのであろう。世間話をし始め全くユーリに気が付いていない。

「おい、聞いたか?下町の魔導器の件。」
「はい、故障したのを直そうと、修理費を集めたとかで。」
「ああ、連中、宝物まで売って工面したらしいぞ。」
「宝物ですか?」
「どうせガラクタだよ、ガラクタ。1ガルドにもなりゃしない。」
「1ガルドにすら!?そりゃどんな宝物なんですかね。一度、見てみたいもんです。」
「だから、ガラクタなんだよ。へへへ。」


騎士の立場からみたら、下町の住人の立ち位置はとても低いのであろう。見下すように鼻で笑っていた。

「あんな言いたい放題じゃ、ハンクスじいさんも形無しだな。
ま、確かにガラクタだけどさ。」

騎士たちの心ない言葉に、不満を覚えたユーリは、騎士の顔目掛けて石を投げつけた。
すると見事にヒットし、騎士たちは倒れ気を失ってしまった。
それを確認したユーリは、門へと近づいて行った。

「ガラクタの価値もわからねぇなら、おまえらはガラクタ以下だよ。ラピード、追えるか?」

そうするとラピードは一足先に貴族街に入り、臭いを頼りにモルディオを探し始め、門から近い左手にあるお屋敷へ入って行った。
ラピードを待つ間、ユーリは貴族街の様子を確認したところ、魔核がない魔導器を見つけた。

「・・・ここも魔核やられてやがる。こりゃ、ずいぶんと手癖の悪いのがいやがるな。にしても、さすが貴族様の街。魔核ひとつやふたつじゃ、誰ひとり騒がねえときたか。下町は魔核ひとつでお祭り騒ぎってのに。
余ってるのら、下町によこせってんだよ。」

ラピードがモルディオの居場所を見つけたのであろう。ユーリの場所に戻ってきてオレについて来いと言うような顔をしていた。

「それにしても、相変わらず貴族様は優雅なもんだ。」
「わう?」
「すぐそこの下町で起こったじけんなんか関係ねぇと思ってんだろうな。
自分に害がないと興味も示さない
家でかくしたり、身なり良くしたりする前にもっと貴族らしい器のでかさを見せてほしいもんだぜ。」
「ワフ〜」

臭いを辿って来たものの、目の前にある豪華なお屋敷にたどり着いたが、何年も人が住み着いていないように思えるものであった。

「ここか・・・なんな、人の気配がしねぇなあ・・・。」

鍵が掛かっていることを確認したユーリは、腹癒せにドアを軽く蹴り、他に入り口がないか探し始めた。
すると一箇所だけ鍵の空いている窓を発見し、そこからお屋敷へと侵入した。

「・・・この家のどこかにモルディオが潜んでやがるはずなんだが・・・ 」

さすが貴族のお屋敷。部屋数がたくさんあり玄関ホールには高価な装飾品がいくつも展示されていた。
モルディオを探すため、片っ端からドアを開けようとしたが全てに鍵がかかっており、モルディオを見つけることができない。

「なるほどな・・・ここまで厳重にしときゃ窓が一つくらい開いてても大丈夫ってことか。さて、どうすっかな・・・。」

ユーリが最後の2階にある部屋のドアに鍵がかかってることを確認した時、1階からドアの開く音と、誰かが玄関ホールへ向かう足音が聞こえて来た。
このお屋敷は吹き抜け構造となっており、ユーリのいる位置からも玄関ホールが見えるようになっている。すると、白いマントとフードを被る怪しい人が玄関前で立ち止まった。

「あいつは・・・。」

その男は荷物をおろし、手のひら大の水色の球を満足そうに眺めていた。その水色の球こそが、下町の水道魔導器の魔核である。

「おし、お宝発見!」

ラピードが先に手すりから飛び降り、男の前に立ち塞がり出口を塞いだ。それに続くように、ユーリも飛び降り男の背後に近づいた。

「おまえ、モルディオだな?」

いきなりの登場に、ビックリしたのであろう。モルディオは焦り、煙幕を使いその場を逃げてしまったが、ラピードがモルディオの荷物を奪い、ユーリに渡した。

「よし、よくやった、ラピード」

ユーリは、早速荷物を隈なくチェックしたが、そこに入っていたのは、下町のみんなが一生懸命に集めたお金たけで、肝心の魔核が無かったのだ。

「なんだよ!魔核がねえぞ!
魔核取り返して一発ぶん殴ってやろうぜ」
「ワンっ!」



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