a shining flower〜水道魔導器編〜

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03.


騎士を追いやった次の日、快晴でとても気持ちの良い風が吹いていた。
ユーリには身寄りがいない。なので住まいとして宿屋『箒星』の一室を女将さん達のご好意で無償で借りているのだ。その代わり、手が空いているときは買い出しなど手伝いをしている。
下町は、お金は無いが人情溢れるとても暖かい場所なのだ。

時間は10時を回っている。約束の時間は過ぎているのだが、リクティスは一向に現れない。
これもいつもの事である為、ユーリは気にせず窓枠に腰をおろし、心地よい風の吹く帝都を眺めていた。

すると、いきなりドンっと大きな地響きがなったかと思えば、所構わず水が流れ出てきた。
勢いのある水に、避難の間に合わなかった人々が飲み込まれていってしまった。

「おいおい・・・マジかよ。」

幸いにも、ユーリの住んでいる部屋は2階であり、なおかつ箒星の近くには川が流れていた為に水の被害は少なかった。しかし、川が溢れるのも時間の問題である。

ドタドタと、階段を勢いよく上がってくる音が聞こえてきた。

「ユーリ!大変!大変!!水に流されるかと思った!」
「リィにしては早い登場だな。それにしても、何が起きたんだ?水道魔導器でも壊れたか?」

少し水がかかったのであろう。リクティスの髪と洋服が濡れているのがわかったため、ユーリはタオルを渡し、窓の方へと顔を向けた。

「それ以外、考えられないよ。でも、止まった事はあったのに水が溢れ出すなんて・・・」

ふたりで話をしているとまた、階段を勢いよく上がってくる音が聞こえてきた。
今度は、先程よりも小さくて軽い音である。

「ユーリ!大変だよ!」
「でかい声出してどうしたんだ、テッド」

その足跡の主は、この宿屋『箒星』の長男テッドであった。まだ幼い子どもであるが、下町を思う気持ちは大人顔負けである。

「あれ、ほら!水道魔導器がまた壊れちゃったよ!さっき修理してもらったばっかりなのに」
「なんだよ、厄介ごとなら騎士団に任せとけって。そのためにいんだから」
「下町のために動いちゃくれないよ。騎士団なんか・・・あ!リクティス!お願い手伝って!!」
「ま、まあまあテッド落ち着いて。焦っても仕方がないよ。」
「そんなこといったって、リクティスだって焦ってユーリのところ来たんじゃないの??」

全身濡れているリクティスの姿をみて、テッドがユーリに早く来てと言う目で訴える。

「世話好きのフレンがいんだろ?それに、大量に溢れる水は怖いんだ。テッドもそうだがリィだって危ないんだから近づくんじゃねえぞ。」
「もうフレンには頼みに行ったよ!でも、合わせてもらえなかったの!」

下町の為に、子供の足では距離のあるザーフィアス城まで走って行ったのだろう。汗をかき、息を切らしながらテッドは訴えていた。

「はあ?オレ、フレンの代わりか?」

ユーリは苦笑いしながら、問いかけた。

「いいから早く来て!人出が足りないんだ!」

すると、したから女将さんのテッドを呼ぶ声が聞こえてきた。

「もう・・・ユーリのばか!リクティス早く来てね!!本当大変な事になってるんだから!!」

そういうと、テッドは急いで階段を降りていった。

「ユーリ・・・いかないの?私はいくよ!」

「危ないって言ってるだろ?ったく。オレが行くからリィはここで待ってろ。」

そういうと、ユーリは窓から外へと飛び出し水道魔導器へと急いで行った。

「ちょ、ちょっと!もー。いつも置いてきぼりなんだから・・・。って!ラピードもいないし!本当においていかれちゃった・・・!」

リクティスも、借りたタオルを洗面台に置きユーリの後を急いで追いかけた。




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