a shining flower〜水道魔導器編〜

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帝都ザーフィアス。
この世界、テルカ・リュミレースを治める帝国のある都市である。
結界魔導器に守られたこの街には、階級の差はあるが人々はそれぞれに幸せな日々を過ごしている。
人と魔物とが戦った大きな戦争、人魔戦争から早10年。帝国の力は更に増し、国民への負担は更に重くなっていった。
そんな中帝都の下町では、騎士による税の徴収が頻繁に行われていた。

「何日待っていると思うんだ。納税の日はもうとっくに過ぎている。早く納めないか。」
「そんな、騎士様。お待ちください。我々は今日のご飯を確保するのにもやっとなんです。近々は季節のせいか旅人も訪れず、商売も上がったりです。とても税金なんて払えません。」

ピンク色の鎧を身に纏った騎士2人が、嘲笑うかのように下町の民からお金を巻き上げようとしていた。

「それは、お前達の生活力が無いからではないのか?下民は下民らしい生活をすれば納税なんか容易いだろう。キュモール様を困らせるのではない。」

そういって、下町の民からお金を巻き上げようとした。

「ああ、騎士様!それだけはご勘弁を・・・それは病気の子どもに飲ませるための薬代なのです・・・」
「ええいうるさい!納めるものを納めないで、都合の良いときに帝国を頼られては困るのだ。これで今月はチャラにしてやる。来月は期限通りに納めろよ?」

そういうと、騎士は市民街の方へと歩きだした。
しかし、市民街へと続く長い坂に長い黒髪の青年が立っていた。

「なにしてんだよ。」

青年の名前はユーリ・ローウェル。以前騎士団に所属していた下町の番犬である。

「ユーリ・ローウェル!ちっ。納税を拒否していた民から税金をいただきにきただけだ。そこをどいた。公務妨害に当たるぞ。」

騎士がユーリの脇を通ろうとしたが、ユーリの華麗な動きによって封じられた。

「へえ〜、騎士様は、市民の生活を守るのが仕事じゃねえの?オレ、てっきりそうだと思ってたんだけど。」

ユーリは騎士に向かって睨み、ジリジリと歩み寄っていった。
それをみた周りの下町の民はその騎士を囲むように追い詰めはじめた。

「お、お前ら!守って欲しかったらそれなりのものをだせ!帝国だって、ボランティアでは働かない事くらいわかるだろう」
「別に、ただで守ってもらおうなんて言ってねえよ。納税のやり方が気に食わねえんだよ。税金とかいって、お前らの懐に入ってるんじゃねーの?」

最近急に上がりだした税金に、下町の民は不満で一杯である。
しかも、増税は税金を徴収にくる騎士団の隊が変更になってからである。それに疑問を感じない下町の民ではなかった。

「うるさい!黙れ!下民が!この金はいい!また徴収にくるからな!」

そういって、騎士はお金を投げ捨てて市民街へと去って行った。

「ったく。キュモール隊は本当問題だらけだな。フレンが苦労するのも目に見えてやがる。」

ユーリはボソッとつぶやき、水道魔導器へと近づいて行った。
ユーリありがとう!という声に、おうっと一言左手を上げてその場を後にした。


「最近、調子悪いんだっけ。こいつ。止まっちまったら厄介だぞ。」

水道魔導器は下町にある唯一の水源である。これがなくなってしまったら生活ができなくなってしまう。
結界で守られているとはいえ、水がなければ元も子もない。

「ユーリ!また騎士ともめたの?」

ユーリの背後から、元気な女の子の声が聞こえてきた。
その子は160cmくらいの細身の子で、茶髪のセミロングを一つにまとめていた。

「お、リィじゃねえか。揉めたんじゃなくて、正論を言ってやっただけだっての。」
「もー。下町の為に頑張るのはいいけど、またお城に招待されたらダメだからね?ご飯おいしくないんでしょ?」
「ああ。でも、誰かさんの料理を食べるよりかはマシだな。」
「もしかして、フレン?」

リクティスは苦笑いしながらそう問いかけると、ご想像にお任せするよ。っとユーリは答え、自分の部屋へと戻っていった。


「あ!ユーリ!明日の約束、忘れないでよ!」
「わかってるよ。10時にオレの家だろ?待ってるから遅刻すんなよ?」

そういって、幼馴染の2人は別れた。
明日から長い物語が始まるとは知らずに。





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