a shining flower〜水道魔導器編〜
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01.
バケツをひっくり返したような雨とは、まさしくこのような事をいうのであろう。
視界はとても悪く、雨風が強いせいで目も開けていられない。
イリキア大陸にある帝都ザーフィアスでは、ここまでの豪雨は珍しい。そんな中、1人の青年が必死になって歩いていた。
青年は、自分の正義を持ち騎士団の門を叩いた1人である。
小さな子どもを隠すように抱えて歩き、とある民家を訪ねた。
コンコンッ
「夜分遅くにすみません・・・誰かいませんでしょうか。」
大きな声を出さなければ聞こえない状況下ではあったが、訳あって大声を出せずひたすらノックを繰り返す青年。
何度目であろうか、1人の老人がドアを開けた。
「どうしたんじゃ。こんな悪天候の中・・・騎士様がわしになんのようじゃ?」
そこに現れた老人の名前はハンクス。帝都ザーフィアスの下町の自治会長を務める者だ。
ハンクスは青年の考えを見抜いたのか、腕に抱えた小さな子どもに目をやると、辺りを見渡して青年を家の中に入れた。
「すまない。この子を、この子を下町で育ててほしい。頼む。」
びしょ濡れの青年が、タオルにくるまれた小さな子をハンクスに差し出した。
子どもは、気を失っているようでこの雨風の音でも起きない。
「なにか、訳ありなんじゃな?」
そういうと、ハンクスは青年にタオルと暖かいスープを渡した。
青年は、それを受け取るとハンクスにゆっくりと語りだした。
後にも先にも、この日以上に天気が荒れた日はなかった。