小説

□scenario which is changed.
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私は今日もまた本を開く。森の風にせきたてられるようにしながら…
『オオカミが赤ずきんに恋をした』
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偶然から始まった、必然のOne scene。
木の陰から見えたのは花を摘んでいる赤い色。
あんな人間見たことないのに、誰だか知っているような気がした。
あの子は、僕に食べられてしまう。
そしてその性で僕が殺されてしまう。
全ての始まり“赤ずきん”

森の奥深く、おばあちゃんの家に繋がる唯一の道。
そこで見てしまった黒い影。
人型に尻尾と鋭い爪。
狼だ!と気付いた時にはもう走り出していた。
あれは私のおばあちゃんを食べて、私も食べてしまう。恐ろしい“オオカミ”

「でも、あなたを見た瞬間。私は狼に恋をした」
「でも、君を見た瞬間。僕は赤ずきんに恋をした」

それでも、私達が出会ってしまったら終わりに続くシナリオに辿り着いてしまうから、出来るだけ出会わないようにわざとおばあちゃん家に遠回りをした。

君に会いたいなんて思わない、会ってしまったら僕の運命は終わってしまうから。
こんな運命残酷なんて誰かに罵ったって何も変わりはしない。

「あぁ、どうしてあなたがどうして私が」
 「あぁ、どうして君がどうして僕が」
  
 オオカミ と 赤ずきん なんだ…?


きっと君は今日も君のおばさんの家から遠回りのこの道を訪れる。
そして僕は今日もこの影から見守ることしか出来ない…!

あなたはあの木の影でいつもどうり私から隠れてる。
そして私は運命が始まるのが怖くて、あなたに殺されて欲しくなくて、そこにいるのに気づかぬフリして通り過ぎた。
私は思う。何故あなたは私に出会おうとしないの?死ぬのが怖いから?それとも…私と一緒の気持ちなの…?

君に一生触れられなくたって構わない。
君を見ることも出来なくなるぐらいならずっとこのままでいい。
こんなに苦しい想いを、こんなに甘い想いを“恋”と言わないなら言葉なんてなくていい
ああ、考えたって祈ったってエンディングは変わらない…ならば、これぐらい、いいよね?

木の根元で休憩していると『トントン』と誰かに肩を叩かれた。
まさか、と思い後ろを向くと私が寄りかかっている木の裏側に狼さんがいた。
なんで?!と思っていると片手だけ私に見えるよう目の前に差し出し地面を指した。
手の動きにつられ地面を見るとそこには
文字が書いてあった。

      『好きだ』

この言葉を見た瞬間、涙が零れた。

本当は直接言いたかったんだ…君の事、好きだって。
そして…可愛い君と優しい僕が出逢い結ばれるendを望んだ。
何回も何回も神様に願ったよ、君と僕が、幸せになる終わりを。
でも、悲しいぐらい、切ないぐらい、狂いそうになるぐらい、死にたくなるぐらい、僕と君は

 「オオカミ と 赤ずきん なんだ」

  だから、叶わない“恋”…なんだ‥!

泣いてる君を慰めたくて、伸ばした腕が震える。
「愛しているよ」
「抱きしめたいよ…」
だけど
「出来ないんだよ!!」
「出来ないんだよ!!」

どう足掻いたって
どう願ったって
爪も牙も消えない
だからただ待っているよ
君の涙が止むまであの木の先で
「「永遠(ずっと)…」」

エピローグ
「私(僕)はあなた(君)が泣き止む日を、出逢える日を‥待ってる。
だから、それまでずっと、永遠に私(僕)を、愛していてね…!!」


        END
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パタンと読んでいた本を閉じ、横に置く。
なんだか、とても悲しくなっちゃった…。
人事とは思えないなぁ〜、なんて思いながらその場で伸びをすると、私が着ている赤いケープを弄る。
赤ずきんっていう子は今の私みたいな格好してるのかな…?
たまたま寒くて着てきただけなんだけど、もし私が赤ずきんでこのケープを羽織って着てきたのが運命だったら面白いのになぁ。
そんな妄想を頭の中で描いていると突然突風が吹いた。
「キャッ!」
反射的に目を閉じ、風が収まるのを待つと少し離れた所から足音が聞こえた。
「君は…」
へ?
いきなり話しかけられた事にびっくりし閉じていた目をパッと開ける。するとそこには見たこともない私と同じくらいの少年が立っていた。
それなのに、どこか懐かしい感じがしていて、いつの間にか、口が開いていた。
「オオカミ…?」
「赤‥ずきん?」
そう呼ばれた瞬間、ドキリと心臓が跳ねる。
少年が、手に持っていた本を地面に落とす。
『オオカミが赤ずきんに恋をした』
私と一緒の本。
でも今は、そんなのどうでもよかった。
分からないけれど、涙が出てきて、口から言葉が零れた。

   「「やっと、会えたね」」

 HAPPY END



このお話はVOCALOID
「オオカミが赤ずきんに恋をした」
をモチーフにしたものです。
以上の物語は全て僕の妄想からできているものですので悪しからず。

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