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□Doll
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(んっ・・何や、ふわふわする・・・)
少女は、宙に浮いているような感覚にゆっくりと瞳をあけた。
そして、自分が何者かに抱きかかえられていることに気づく。
それは、艶やかな黒髪に、燃えるような赤い瞳をした少年だった。
少女が目覚めたのに気づくと、一瞬だけ彼女を一瞥し、すぐに視線を戻して、歩き出した。
少女は、ふわふわとした心地良い揺れに、再び瞳を閉じて眠りについた。


「おい、起きろ。」
静かな声が聞こえ、少女は、目を覚ました。
どうやら、ベッドに寝かされていたらしい。
きょろきょろと辺りを見回している少女に先ほどの少年が口を開いた。
「今日から、お前は、俺のものだ。この家で俺専属の使用人として働いてももらう。」
また、見知らぬ人に買われたのかと、少女は、すぐに理解した。
「お前、名前は?」
少年が尋ねた。
「ありません。」
と少女が答えると、少年がぽつりとつぶやいた。
「蜜柑・・・」
少女が首を傾げると、少年が今度は、はっきりとした声で告げた。
「お前の名前は、蜜柑だ。」
「みかん・・・」
初めての名前に少女の口元が自然と緩む。
「仕事は、他の使用人に聞けばわかる。ついて来い。」
少年は、そう言うと、扉の向こうへ歩いていってしまった。
蜜柑は、慌ててそれを追いかけ、寝室らしき部屋を出た。
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