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□疑い
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「コジロウ」
「なに?どしたムサシ」
真剣な面持ちで声をかけてくるムサシに思わずコジロウは身構える。
「あの…あのね、こないだ…」
「ただいまなのにゃー。ご飯作るにゃー」
「お帰りニャース。ご飯なに?」
「カレースープにゃ」
ルーの節約で、とろとろのカレーじゃないのは想定内。
「ライスは?」
「パンが少しだけあるのニャ。ナンだと思って食べるにゃーす」
「わかった!楽しみだな〜カレー」
貧乏生活が板についた元お坊ちゃんなコジロウは無邪気に喜ぶ。そしてムサシに同意を得るために
「ねっ」と振り向くと、ムサシは少し不機嫌そうな顔をしていた。
「ああごめんごめん。途中だったね、こないだって?」
慌てて続きを促すも、返答はない。その様子を、料理しながら横目で見ていたニャースは不思議に思う。あれだけ食べることが好きで、さらに、好物のカレーなのに喜ばないなんて、と。
「………」
触らぬ神に祟りなし。といった風で何も触れずに黙々料理をすることにしたニャース。
「ムサシ?」
心配そうにムサシの顔を覗き込むコジロウ。
「あとからで…いいわ」
「……?わかったよ」
どことなく元気がないようにも見える。怒っている訳ではないのかも。
ただ、元気がないのはムサシらしくない。ここでようやくコジロウは心配しはじめた。なにか重大な話なのかもしれない。
例えば、……最悪の想像が頭をよぎる。
コンビを組んで数年。想いが通じて数ヶ月。もしかすると、別れ話……?
いやいや、とコジロウは頭を振る。勝手に推測していても、真実には辿り着けないんだから、ムサシが言い出すのを待とう、と。