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□SS
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寝ぼけ眼で、うっすら光る月明かりを頼りに歩いた。
コップに水をいれ、渇いた喉をうるおす。

視界の端で何かが動いた気がして目を向けると、真紅の髪が視界に入る。

「起きてたんなら、声かけろよ」

「うっさいわね」

そこにはムサシがいて、月が目える窓から外を覗いていた。
背中を向けたまま言葉を返される。時計の秒針は薄っすらとしか見えず正確な時刻は分からないけれど、真夜なのは間違いない。

「何時から起きてるんだ?」

「結構前」

やっと振りかえって応えるムサシの表情は、暗くてよく見えない。

「眠れないのか?」

ええ、と短く呟く姿は、普段見せる自信満々な彼女からは想像出来ないくらい儚げに見えた。

言葉を掛けられないでいると、ムサシはふいと、また視線を窓の外へ戻してしまう。

何か見えるのかと思い、コジロウも窓の傍まで行き、同じものを見てみるが、特に彼女が興味を引きそうなものは無いように見えた。

コッソリ横顔を盗み見ると、さっきよりも顔がはっきり見える。何を考えているかまでは分からなかった。

「月の明かりって、思ってたよりも明るいんだな」

何気なく口にする。返事は無い。

独り言のような呟きだったし、特に気にしたりはしなかったが、様子がおかしいとは思った。

「どうかしたのか?」

「どうもしないわよ。…眠れないだけ」

「悩み事?」

「悩んでる訳でもないわよ」

それから、コジロウが何も言わないでいると
、少しの沈黙ののち、ムサシはポツリと呟いた。

「おかしな夢を見たのよ」

コジロウがロケット団を抜けて、家に戻り、許嫁と一緒になって、私とニャースのことなんか忘れたみたいに、平凡に暮らす夢をね。

「許嫁ってルミカのことか?」

うげぇと吐く真似をしながら尋ねると、こくんとムサシは頷いた。


成る程、というか、そんなことかと内心は思ったが口には出さずに、コジロウはムサシの頭にそっと手をのせた。

「寂しい夢だな」

それで眠れないなんて、可愛い。と思った事も胸にしまう。

「俺がお前たちと離れるなんて、あるわけないだろ」

頭に乗せた手で優しくなでる。

「そうよね…」

ニッと笑って立ち上がるムサシ。どうやら調子が元に戻ったみたいだ。
ニャースが大の字になって眠る布団の空いているスペースに2人で横並びになる。お腹を向けて野生を捨てたニャースが小さな布団の大部分を占めているから、俺とムサシは必然的に密着することになる。

布団の端に横たわる俺は、掛け布団から少しはみ出していた。

「俺、はみ出してるんだけど…もう少しそっちに行ってもいい?」

それほど寒くも無いけれど、口実として丁度いいかと口にする。

「ん…」

こくんと首が動くのを見て、そっと寄り添うと、ムサシの身体がもじもじと動いた。

暗くてよく見えないけれど、近い距離で向かい合っているから吐息が顔にかかる。

普段、何かが起こるとすぐに抱き合ったりして、密着するのは慣れていたはずだけど、不思議といまはドキドキする。

1人であれこれ考えていると、いつの間にか規則正しい呼吸音が聞こえてきた。

(眠れないって言ってた割に、布団に入るとすぐ寝るんだな…)

クスッと笑う。

俺も早く寝なきゃな、と、コジロウも目をつむって早く眠るように努めた。





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