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□風邪
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この日三人は。いつものようにピカチュウゲットの旅の途中だった。

ただ、いつもと少し様子が違っていて…

「大丈夫かにゃ」

心配そうに声をかけるニャースの言葉は、布団で横になるムサシに向けられていた。

辛そうに、浅い呼吸を繰り返すムサシ。額には汗を掻いていた。

「ニャース、ムサシの様子はどうだ?」

「お帰りなのにゃコジロウ。ムサシは相変わらず、辛そうなのにゃ」

コジロウは、近くの川で水を汲んできたバケツでタオルを冷やし、水気を絞ったそれでムサシの額や首筋、それに服から覗く手足を拭いてやった。

それが終わったら、またタオルを絞り、ムサシの額に乗せてやる。

心なしかムサシの寝顔が安らかになった気がした。それでも辛そうなことには変わりなかったが。

「あとは医者に見せられたらな…まぁ風邪だろうし、薬があればいいんだけどな」

「両方とも、お金をもってないニャーたちには無理だにゃ」

だよなあ、とコジロウは肩をすくめる。
実際その通りだったが、やるべきことは他にないか、落ち着きなく探すコジロウをニャースは諫める。

早く楽にしてあげたいという思いがコジロウを急かしていた。

「あ、そうだ、ジャリボーイたちなら薬、持ってそうじゃないか?」

「にゃにゃ!確かに。あの家庭的な男にゃら、備えてありそうだにゃ」

「俺ってば、いいこと思い付いちゃった。さっそく、もらいに行ってくるよ」

そう言い走り出そうとするコジロウをニャースが止めた。

「待つにゃコジロウ!普通に行ったって、渡してくれなさそうなのにゃ」

敵対関係にある立場だ。いくらサトシたちがお人好しだからって、口うるさいジャリガールが止めたり何やらで、貰える可能性は低い。

何か作戦をと薦めたニャースにコジロウは

「作戦なら、もう立ててあるさ。すぐ戻ってくる」
ムサシを頼んだぞー!

話しきらないうちに、走り出してしまう。もう姿は見えなくなっていた。

「ピカチュウゲットの時も、あのくらい頼もしくしていて欲しいのにゃ」

ニャースはやれやれと一人ごちて、ムサシの額に乗せてあるタオルを冷やし直した。
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