手を伸ばせ!!

□私は女子マネに期待する。
2ページ/4ページ



男子バスケットボール部のスペースに行くと、部員である小金井慎二が長机に突っ伏していた。
それを華麗に無視して、私は笑顔を浮かべる。

「あっ!お前、手伝いにくんなって言っただろうが!!」
『リコちゃーん!』
「聞けよ!」

部長の日向が声を荒げるが、私はそんなこと意に介さない。
リコちゃんは私の方に顔を向けた。
かわいらしい瞳が、私を捉える。

「あら、かなえ。来たの?」

彼女は、誠凛高校バスケットボール部監督・相田リコちゃん。
女子高生ながらも、プロ級の知識を持つ、優秀な少女だ。

『まあね〜、かわいい女の子がたくさんいるみたいだから』

ついつい、周りを気にしてしまう。今年もかわいい子が多い。
私を見て、日向はため息を吐いた。

「相変わらずだよな、お前は」

彼は日向順平という。バスケ部の主将だ。

「さすが、[王子様]だな」

そう笑う伊月俊は、なかなかのクール系イケメン。
無言で頷く水戸部凛之助は、バスケ部の良心。
苦々しい表情の土田聡史は、メンバー唯一の彼女持ち。

「頼むから、俺の彼女には手を出すなよ……」

彼は深刻そうな声音で言った。
それに対し、ひらひらと手を振って返す。

『大丈夫だよ、土田。私、一回口説いてダメだったら、諦めるようにしてるんだ』
「口説いたのか!?」
『うん、一回だけ』

土田は青ざめた表情で、私を見つめた。私は穏やかに笑って、土田の肩をポンポンと叩く。

『だから大丈夫だって。気にすんなよ』
「気にするだろ普通!!」

私は心の中で、息をつく。
まったく……

『言っとくが、彼女相当お前のこと好きだぞ。メル友だけど、話の内容、お前についてばっかだし』

その所為で口説けなかったんだ、とぼやくと、土田は嬉しそうに目を細めた。
……まあ、目はもとから『起きてる?』と聞きたくなるぐらい細いのだが。



. 
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ