月影と愛されし君 magi

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族の末路は、とそう聞いた其処に居た
霧の団の団員たちは、殆どが一斉にその場を俺も俺もと逃げていった。

そして、その場から逃げなかったのは今此処に残る数名のみ


「………残ったのはこれだけか。」
「……俺の…「霧の団」が…」

「……「霧の団」は君が作ったのか。」


「………………」


シンドバッドのその言葉にそのまま俯くカシム


「義憤のために国軍と戦うなど…死ぬつもりだったのか?無謀な上に愚かだぞ。」
「無謀じゃないね!俺たちは国軍に負けなしだった」
「それは、国軍から情報をもらってうまくやっていただけだろうが」

「!!」



「己の無力さも分からないから、お前は尚更愚か者だ!「霧の団」は弱い!俺一人に壊滅させられるほどに弱い!お前は、勝てないケンカに周りを巻き込んで破滅させようとしていただけだ!!」



カシムのその言葉に、シンドバッドはそう言った。指を指して声を荒げそう言った
それに返す言葉すらないカシムは押し黙り

屋上の床を殴った



「だが!!」

「ん?」
「だが、それでも戦うといのなら、お前らにはもう一つ道が残されている。」

「………………ん??」

「それは自分達には足りないものを、他者で補うことすなわち、この俺とルシリスを「霧の団」の仲間にすることだ!!」


「えぇ!!?」




……何故、其処で俺が出てきた?

急に言いだしたシンドバッドに眉間にシワを寄せる。嫌ではない、手を貸して欲しいと言われたならば
俺は快く手を貸す。そう快く

言ってくれば、俺は前に傭兵やってた事もあるから


これが、彼のやり方らしい。

ま、だからこそ彼は此処まで…。あの国、シンドリアの王になり有名になったのかもしれない。
ジャーファルと言い合いをした結果、ジャーファルが悪いという結果になったらしく隣でマスルールが慰めているから
同じく頭を撫でておいた。


その後、色々あったが話は纏まり明日

王宮に俺とシンドバッドとアリババで話をしに乗り込むことになった。













 ― ◆ ―







「……はぁ、なんで俺巻き込むんだか…」
「ルシリスは金属器を持っていない俺の、いわば金属器のような存在だ、今は。」

「利用しようってか…」



ため息すら出ない、と溜め息を吐けば



「手…」
「ん?」

「手出せ、治すから……」

「はは、いや良いよ大丈夫だ」
「………」



ジャーファルとマスルールは少しやる事のために席を外していて、今は俺とシンドバッドの二人きり
少し前にもこんな事があった気がするが

今はそんなことは気にしない。


手を出せ、そういうも大丈夫だと話を断るシンドバッドに怪我している方の手を掴むと思い切り握って


「いっ!!?」
「ったく、無理すんなアホ……」


滲んだ血が包帯を赤く染める

包帯を解けば、手を掴み呪文を唱え傷口を舐める。そうすれば傷跡は残るも傷口は綺麗に塞がった。
口の周りについた血を舐めると、残りは拭った



「………ん、うまい……」

「っ―――…」



その瞬間視界がぐるりと周り、見えるのは天井と彼。

シンドバッドに押し倒され馬乗りになられている、それが今の状況。逃げるに逃げられない
目を細めれば、両腕を掴まれる



「何処までお前は俺を魅了すれば、気が済む…どんな魔法だ?」

「魔法?誰が…俺がシンなんか欲しいなんて思うか?俺はアンタみたいに真っ黒で真っ白い人間が大好きで大嫌いだ」
「っ…要は、好きでも嫌いでもないってことなんだろ?」

「じゃあ、嫌い」

「じゃあってなんだよ……」



真っ直ぐに見上げれば、真っ直ぐにこっちを見てくる彼琥珀色に怪しい色が灯る



「言っとくけど、俺は男だ」
「だからなんだ?俺はそう言ったはずだ。それにこんなにも俺の事を夢中にさせといてお前は遊びだとでも言うのか?」

「俺はそんなことした覚えないし、それ以上触る――ッ」



片手で、両手を封じられているためどうしようもなく
シンドバッドの手がルシリスの頬を撫でる。


その感覚に目を細め睨みつけるも、相手は気にしていないらしいそれが更に頭に来て口を開こうとすれば、その瞬間に口を塞がれる。


「んっ…っは……」


口を開けていたため咄嗟に締めようと口を動かせば、相手の舌が口の中に侵入してきて舌を絡め取る。その舌から逃げれば直様追ってきて、更には腔内全部を犯す。
酸欠とそんな行為がために目の前が、ちかちかとし始めこれはマズいと思えば足を振り上げ相手の腹に一発

そのまま相手は上から退く


退くと言うよりは、痛みに悶える相手を押し退かす…というのが正しいかもしれない



「巫山戯んな、この変態葉王が!!!」



そう叫ぶように言えば部屋を出て行く。
あぁ、口が気持ち悪いあいつの舌の感覚が今でも鮮明に残っている
気持ち悪い気持ち悪い、そう言いながら歩けば水を貰いそれを一気に呑む。

一人でそうやって空を見上げれば、隣へとやってくるのは灯厘で、擦り寄ってくるから抱き締めればそのまま眠った







 

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