月影と愛されし君 magi

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「折角飯食い始めたところなのに……」



あーあ、なんて言って溜め息をつく
俺の食事時間が減った、それだけなんだが…たったそれだけ。それに寧ろこっちのが俺は好きだったりするのだが

手に持っていた残りを口に押し込めば飲み込むと



「なんなんだ?こいつらは…」


「よくも俺らの頭をさらってくれたな」


「やれぇ!!」



その男がそう叫ぶと同時に一気に大量のボウガンの矢が飛んでくる
が、しかし目の前にいたマスルールが片手で大理石の机を持ち上げたためそれは防がれた

大理石…と目を丸くしにやりと不敵な笑みを浮かべたルシリスは

最後に手に入れたジンの宿る、黒剣を引き抜き
反対側にいるジャーファルとは別の方向から飛び出し、男たちの武器だけを破壊してゆく



「あの机大理石だぞ!?あの男バケモンか!?」


その時後ろで、幹部らしき男をシンが抑えるも武器が悪く剣が溶けた



「ああ、もうこの役立たず!」

「うるせえ!!」
「おらっ!!」



「……??なんだぁ?今のはよぉ…」




しかし、その程度で、金属器が無いからと言って弱い彼でないのは分かっている。
だからこそ、別に助けないし

寧ろ彼という人間の強さを測る


「ハッサン!?」

「余計な魔力を使わせやがって!」
「畜生が!皆でやっちまいな!!!」

「おう!!」


その女は男を庇いながら、周りを動かしこちらへと他の族の男たちを動かす。
しかし、これも幹部の人間


その時この部屋の音に混じり、上の音が聞こえる

後ろまで戻れば、近くに居るマスルールに声を掛けた


「マスルール俺ら三人連れて屋上に行けるか?」
「……出来ますけど…」

「なら、俺ら三人まとめて連れてってくれ」

「うす…」

「ち、ちょっと待てなんで屋上なんだ?」
「話は後!」



その瞬間マスルールは三人を抱えて屋上までひと飛びで天井を何枚も打ち抜き屋上へと降り立つ。







「アラジン大丈夫か?」
「ルシリス!!」

《がう》

「灯厘も大丈夫そうだな、よかったよかった」


近くにいたアラジンの頭を撫でれば、灯厘が出て来た。
どうやら、灯厘が二人を守ってくれたらしい
思い切り撫でたいが、それはこれが終わるまでおあずけ





「流石に数が多いな………マスルール!」

「了解。」


マスルールはシンドバッドに言われれば直ぐに前に出て行って、一気に男たちの間を駆け抜ける…と言うよりも飛び抜けた。
男たちは吹き飛ばされ、今日あった男

カシムと言う男の後ろへと立つ



「やりすぎだぞマスルール。少しは手加減しなさい」

「な…なんなんだてめぇは………」
「何って…俺を探しに来たのはお前らだろ?」

「そうか…お前がシンドバッドか。それにそっちのお前はやっぱりそっちの味方だったのか…先に手出してきたのはしっちじゃねぇか!!」



その男は偶々、シンドバッドの後ろにいた俺を見つけそう言う
そして、腕につけた剣を構え



「くらえ「黒縛霧刀」!!!」


剣から黒い霧のような物が出てきて、ルシリスとシンドバッドの身体を絡め取りそして身動きが取れないほど重くなれば
同時に尻餅をつく


「うげ…最悪……」

「なんだこれは?」
「これが昨晩の「黒い霧」ですよ!」

「あぁ、例のお前が捕まったっていう」


呑気に話すなよ、とシンの背中に一度だけ頭突きをお見舞いしておいた。
背中越しに相手の体温と鼓動と声が反響してくるのが気持ち悪くて、少し離れる



「動くんじゃねぇ…てめぇらの大将とコイツの命がねぇぞ!」

「ちょっと待てよカシム、さっきから何言ってるんだ!?」
「情報が入ったんだよ!!シンドリア王「シンドバッド」が…俺たち霧の団を狙ってるってな!」


「ほぉ、そのことを誰から聞いた?」



カシムの言葉に反応したシンが声をかける
それも良くて、霧に触れればそのまま魔力操作で消し去り離れて立ち上がれば、服についた塵を払い落とす



「この程度の魔法道具は、俺たちには効かないよ。さて、もう手はないのか?」

「くそっ!!」

「これでアブマド王との約束は果たせる。な?なんとかなっただろう?ジャーファル」
「えぇ、そうですね」


「さあ、お前を捕まえて国軍に突き出せば俺の仕事は終わりだ。」


「「!」」
「…!」



立ち上がったシンドバッドは、この一番初めにジャーファルに言った言葉が本当になっただろうと
鼻高々に言った。

そうすれば、目の前の二人は驚き固まる



「ね?怪傑アリババ君。」



そして、シンドバッドが指したのはアリババ




「あとは、君を倒せば終わりだよ。怪傑アリババ君。」

「くっ……」

「さあ、君も剣を抜きたまえ!!大将同士で決着をつけようじゃないか。なんなら出せば良い。「攻略者」なんだろう!?」



シンドバッドはマスルールの剣を受け取り鞘からだし、アリババへとその鋒を向ける。
目を見開き、アリババはシンドバッドを見る

シンドバッド、まぁ彼は有名人だからな。アリババ君も知っているのだろう…彼があの伝説…のシンドバッドだということを



「アリババ逃げろ!!逃げてくれ!!おう、野郎ども!俺たちの頭領を逃がすんだ!!」



マスルールに捕まっているカシムが大声でそう叫び周りを促す



「ほお、大将を逃がすか。それも一つの判断だ。」



そのままシンは続け、全部を話してゆく。


しかし、彼はつくづく嫌な人間だと俺は思う。好きであって嫌い。その言葉がちょうどいいかもしれない
今こうしてアリババに話しているのも、嗾けて彼の心を揺さぶり

そして、力を見極めようとしているわけで


大体の人は、目の前のアリババくんの様に自棄になり刀を振るってしまう。
ルシリスはそんな目の前の光景を只々黙って見ている。口出しすること無くただただひたすらに傍観に徹している。






 

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