月影と愛されし君 magi

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最近、というか此処の所あいつの考えてることが全く読めない。元々読めない奴なのだが
何時も飄々として、何を考えているのか心は何処にあるのかわかったものじゃない。だだ、俺は、彼が欲しいと思ったのも事実
国のため、いやそれ以上なそれ。

国のためにも、必要かもしれない

しかし、それでも―――



「シン…シン!」

「あ?あぁ、すまない…なんだ?」
「何を考えてらっしゃるんですか?ルシリスですか?」

「………そう、かもしれないな」

「なら今それは置いといてください、彼帰ってきましたから」


「俺がどうした?それより腹減ったー」



帰ってきての第一声がそれだ

本当に猫だろう、何処に耳と尻尾隠しているんだと問いたくなるぐらいに気紛れで、自分の腹が減れば何時もこうして目の前に帰ってくる。
そんなルシリスに惹かれたのも事実、そんなところが人を惹きつけるのかもしれない
何時も笑みを浮かべたその顔、それでもって

時々見せる、真剣な顔や泣き顔や人を見下すような無表情の冷たい目それから、剣を握った時のあの表情


何時もの今の様な穏やかな表情とはとても、思いつかないような表情を見せる。



「腹減ったじゃないでしょう!今まで何処行ってたんですか!」
「何処って、あの辺とあの辺」


「あの辺とあの辺って……はぁ…」



ジャーファルはすかさずルシリスに何処へ行っていたのかと、問い詰めるが本人は窓辺に行き眼下に広がる街を指差し
あの辺、と自分のいたであろう場所を指差し伝える。
しかし、それでわかるわけでもなく

彼ジャーファルが問うて居るのはそんなものじゃない



「良いだろう?俺が何処にいようと。俺の勝手、それに俺は君たちの物じゃない」



そう、その目。なんでも見透かしたようなその真紅の瞳

ルシリスは目を細めると、一気に表情をなくしそう言う。
者、でははなく、物と言ったのには訳があるのだろう

だが、あまり自分の事を自分からは言い出さないルシリス
だからあまり知らないのが現実。


しかし、知っている人物がいるのも確か。

煌帝国の人間は、ルシリスを知っている人間が多いに違いない。そんな事を考えるだけでなにか黒いものがモヤモヤと動く。



「っ……」

「それより、腹減った……って、思ったんだが、何やってるんだ?」



そう言うと首を傾げるルシリス

可愛いな…じゃなくて


「話を聞いているところなんだ」

「そっちは確か…アラジンたちの?」
「あぁ、今アリババくんが居るようなんだ」


穴に物を当てて上の話を聞く、そうしていれば
彼は黙って静かに自分の鞄の中から、食べ物を取り出し黙々と食べ始めたではないか。


「アリババくんねぇ……なぁ、もしあの子が此処生きていられたらさ、剣術は俺が教えたい」


「?」



急に何を言い出すのかと思えば、食べ物を手で持ち眺めながらこちらを見ずにそう言う

その瞬間――――




ガシャ――――ン!!


耳を通り抜ける音にその場から飛び退く










 ― ◆ ―





「折角飯食い始めたところなのに……」



そう言えば、後ろの壁から入ってくる族達に溜め息をついたルシリス
今食べ始めてホンの少し


手に持っていた残りを口に押し込めば飲み込めば



「なんなんだ?こいつらは…」


「よくも俺らの頭をさらってくれたな」


「やれぇ!!」



その男がそう叫ぶと同時に一気に大量のボウガンの矢が飛んでくる
が、しかし目の前にいたマスルールが片手で大理石の机を持ち上げたためそれは防がれる。

ルシリスはその瞬間前には見なかった新しい、剣しかも金属器を引き抜いて目の前の男たちに斬りかかってゆく



「あの机大理石だぞ!?あの男バケモンか!?」


幹部らしき男を抑えるも武器が悪く剣が溶けた



「ああ、もうこの役立たず!」

「うるせえ!!」
「おらっ!!」



相手の男が武器を降るも軽く避けて、相手の腹めがけて一発



「……??なんだぁ?今のはよぉ…」



しかし、それも直ぐに大量の血を吐き出し倒れる男



「ハッサン!?」

「余計な魔力を使わせやがって!」
「畜生が!皆でやっちまいな!!!」

「おう!!」


その女は男を庇いながら、周りを動かしこちらへと他の族の男たちを動かす。
しかし、これも幹部の人間



「マスルール俺ら三人連れて屋上に行けるか?」
「……出来ますけど…」

「なら、俺ら三人まとめて連れてってくれ」

「うす…」

「ち、ちょっと待てなんで屋上なんだ?」
「話は後!」



ルシリスの急なそれだが、今はそれを優先した。
そうすればマスルールは俺ら三人を抱えて、その場で飛び上がり

そのまま屋上へと辿り着く






 
 

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