月影と愛されし君 magi

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あれから、結局向こうについたのは霧の団全員が消えてから。

アラジンの様子がおかしい


それは見れば分かることで、ルシリスにぎゅっと抱きついた


「……………」

「…アリババってのが、お前の友人だよな?」
「……うん………」

「少し見ないうちに、人が変わることは幾らでもある…けどな、変わらないとこだってあるはずだもし、彼が…道をそれるなら友人のアラジンはそれを正す事が出来る。そう落ち込むな」



頭を撫でれば、ぎゅっと握られた服。
優しく頭をなでれば、辺りのにおいを嗅いでいるモルジアナが目に入る。きっとそのアリババという人間を探しているのだろう
けれど、今は色んなにおいが混じっている。

海の潮風もその内の一つ

大概、俺も鼻は良いがモルジアナやマスルール程ではないため俺には尚更分からないしきっと彼のにおいのするものも無いだろうから灯厘で探すこともできない




「………シン、俺少し出てくるわ」

「出てくるってどこへ?!」
「何、何処かへ行くわけじゃない…少し其の辺の散策さ…夜にはこのホテルに戻るさ」





そう言い残せば、灯厘に此処に残るように言う。そうすればアラジンの隣へといくのを見届け飛び上がれば家屋の屋根の上に登り目指す











 ― ◆ ―




細い路地が幾つもあるこの街、そして沢山のスラムの人間たちがいる。
その細い路地を一人歩く

しかし、この髪に俺の武器やら装飾やらはあまりに目立つ
そしてこれをはぎ取ろうとする、人間たちまでいるぐらいだ、相当困っているのだろう。



「………アンタ、何者だ…」

「やあ、初めまして」
「………」

「別に怪しいもんじゃないし、俺こんななりだけど貴族じゃあない。ただの旅人だ」


「…そんな事……言ってどうしたい…」

「別に?」




歩いて行けば、少し離れた路地の光が差し込む側に寄りかかるように立っている彼


見つけたと言わぬばかりに、ルシリスは口角が上がるのに気づき直す。
目の前にいる彼は何処までも、黒い黒いものを持っている


「分かんねぇやつ……」
「ははは、それでいいさ。で?君が霧の団の実権者だろう?アリババくん…彼を、リーダーに仕立て上げて…何がしたいんだ?」

「お前に何わかる」


「分かるさ、何でかは…教えられないけどな」

「……………」



「カシムー…カシムーって、あ、居たいたこんな所で何やってんだ?」



無言が続けば、目の前に彼が現れる。

自分と同じ金色の髪のまだまだ青年、と言われる彼、若い。それが見て思ったこと




「あ。あぁ、アリババ…」
「っ、誰だコイツ…」

「ははは、初めましてアリババくん。」

「なんで俺の名前…」
「お前今有名だろう?怪傑アリババってよう…それにしても変な奴だそいつ」
「変だなんて、失礼だなお前ら。それにしても、そんな事やって何になる?何か変わるのか?」


眉間にシワを寄せれば、彼を隠すように立つアリババくん
その手には短剣、それがアモンの剣だと気づくのは早くそのまま俺に斬りかかってくる


ふふ、彼には少しお仕置きが必要かもしれない



刀であるマルコシアスの剣を抜けば、相手の剣撃を防ぐ


あぁ、勿体無い




「はは、弱いな…弱いよお前」

「な、にが!!知ったような口聞くな!」
「そんなことでキレて、ただのおこちゃまが――」


刀を振れば、軽く相手は吹き飛ぶ
王宮剣術を持っているのに、アモンの剣を持っているのに



《勿体無い…》



はは、マルコシアスに言われたら御終いだな。彼は剣術に特に秀でているから



「太刀筋は良いのにな…勿体無いな本当」

「はっ?!」
「っ、相棒引くぞ!」


その後ろの彼の声に振り返った彼は、そのまま剣をおさめ走って退散。
ふう、と溜め息を吐けば剣をおさめ顔を上げる


日が落ちてきて、薄暗くなった空。


腹減った、と思うと同時に腹の虫が鳴く



「何か食いに行こう…」



まだ早いが、ホテルに戻ることにした。

彼は本当に勿体無いと思った、ちゃんと鍛えればもっとずっと伸びるだろう。ただしかし、昔の自分に重なるのが少々気に食わない
元々自分の過去には良い思い出は少ない。

それは嫌な思い出が多すぎただけであったわけで、無かった訳ではないのだが…彼も彼なりの思いも体験もしてきたのだろう
ははは、気が向いた。事がおさまって
もし彼が生きてたときは、俺も剣術の相手になってもらおう


そんな淡い期待を持ち、歩きだした











「なんだったんだ、あいつ…男?女?女なら俺が情けねぇ……くそ、何なんだよ…」



彼は一人、悩む。









 

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