月影と愛されし君 magi

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 ― ジュダル ―








あの後、ルシリスが気になって
前に見つけた部屋

そこは誰もいないのに、何時も綺麗に使用人の女が片付けているあの部屋だ。
あそこが怪しいと、来てみれば大当たり


しかも、相手はベッドで一人で寝ている



「…………」



空中散歩の延長なため、窓から入れば近づいて顔を覗く

女の様で、男な顔のルシリス
眠っている時、初めて見たが…心が何故か物凄く落ち着くし見ていたくなるそれ。
初めて見たとき、一目でコイツが好きで欲しくて自分のモノにしたくて堪らないと思った。


足音を立てずに近付けば、顔を良く見る


普段起きている時は、挑戦的な笑みを浮かべたり…殺気立ってる顔はまだ見たことないがそれはそれは良い顔なんだろう。あの紅い俺よりも色の濃い瞳は物凄く、綺麗だと思った
なんて考えを巡らせていると、この分だと相手は起きないだろうと仮定したのか
勝手に腕が動き、相手の頬に触れる。
触れば、生きている証拠の温もりと寝息が手に少しあたって擽ったい



「……なあ―――…」



俺は、お前が欲しい。

そんな言葉が、頭に出るが口には出てこない


良く見なければ、死んでいるようにも見えるその綺麗な寝顔。口付ければ起きるなんてそんな話を紅玉のババアが本で読んでたっけな
それが頭を過ぎれば、即行動。思ったことは直ぐに行動する自分

ジュダルはそのままゆっくりと動くと、相手の上に軽く跨がり馬乗りになれば顔を近づける



「何?」


それも直ぐに、目が開いた相手に遮られる
驚けば直ぐに身体を離して
相手を見る


「なっ!?」
「なんで俺が起きてるのか、か?」

「そ、そうだ…今寝てただろ」

「……あー…デジャヴ…」
「は?」
「あ、いや何でもない。で?俺になんの用だい黒猫君」



質問し返せば、変な事を言い出すルシリス
デジャヴ?それって確か、前にも同じことがあったってことだろ…?
なんで、そんな事…誰だ――…じゃない

身体を起こしたことにより、必然的に相手の腹の上に座る体勢に変わり



「黒猫ってなんだよ、俺はジュダルだつったろ」
「知ってる。俺が思うに俺よりも君の方が…猫っぽいなって思ってさ―――…黒くて綺麗だな」



綺麗、そう言いながら俺の頬を撫でてくる目の前にいる相手、ルシリスは言った



「は?んだそれ」

「そのまんまの意味だろ?真っ黒に金色のアクセサリーと月食の時の様に真っ赤な瞳…凄い綺麗だ」
「…………」
「はは、嫌だったか?ごめんな。それはそうと、俺の上から降りてくれないか?」
「………が……か…」

「ん?」

「違ぇよ…んな、こと……言われんの、初めて…だ、から…」
「そうか。俺は綺麗だと思う」



そう言って微笑むルシリスに、頬が熱くなったのが自分でも分かって顔を逸らす
俺が乗っているのにも関わらずルシリスはもぞもぞと動き、俺を足の方に下ろして上半身を起こす
そのまま相手に寄り掛かれば、相手は
抱き締めて頭を撫でてくる。

子供の扱いのようだが、そんなのも嬉しくなってそれを表現できないから相手に擦り寄る



「ほんと大きな猫だな……」

「だから、猫じゃねぇっての……」
「俺には耳と尻尾が見えるけどな?可愛いよ」
「お前だけだろ」

「あぁ、俺だけでいいよこんな可愛いお前知っていられんのはさ」



耳元でそう囁く相手に背中に、ぞわぞわと上がり来る何かに身体を震わせる



「それより、一緒に昼寝しないか?早起きで眠いんだよ俺…」
「はぁ?まだ寝んのかよ」

「お前が俺の事起こすから、全く寝れてないんだが?」



それは俺が悪いのか…と言えば
即答で頷く相手に返す言葉も見つからない為、どうやって、と
問えば、そのままジュダルを抱き締めベッドにもう一度倒れ込むルシリス

おいおい、無用心にも程がないか?なんて自分のあるかないか分からない理性と言うものを働かせ一緒に寝る事を決めた





 

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