月影と愛されし君 magi

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――――朝を少し過ぎたバルバッド王宮


王宮客間では静かに会談が行われている。
中央に座るシンドバッド、後ろに待機するジャーファルとマスルール。
そして、ルシリスはそんなシンドバッドの座る椅子の肘置きに浅く腰掛け机の上にあるフルーツを上を向きながら食べている。



「オイ。なぜ俺の国、シンドリアとの交易を打ち切った?ワケを聞かせてもらおうか。」



そんなシンドバッドの表情と圧力に、二人共押し黙る



「ど、どうしよう兄上…シンドバッドおじさん怒ってるよ…ルシリス兄ちゃんも何だか怒ってるみたいだし…」
「ハァ…全く面倒な人が来たでしなぁ…」



うんうん、丸聞こえだな俺には
はは、はぁ……二人共俺と少ししか変わらないのだが…それにしてもまぁ、少し会わない内に大分変わったな、特に
アブマドの方は…太ったな、更にな。

そう考えながら、目もくれず一つ一つ果実を食べている。
真横からのジャーファルの視線が痛いが気にしない、俺は前を向けば口を挟みたくなる。だからこそ
こうして他に自分から気をそらして、今こうしているわけで


あ……垂れた…



「ハハ、まあまあシンドバッドおじさん!お久し振りでしなあ。」
「でっかくなったな、サルージャ兄弟。ついにお前らが国王か。」

「ハハハ、おじさんは少し腹が出てきたでしなあ。」


「ウルセーお前には言われたかねーよ。」

「イタタタイタッ、離すでし!」



垂れた雫が床に落ちるのを見届ければ、無視してまた食べる。

ふと、向こうを見れば
何だか騒がしくて、シンドバッドがアブマドの腹の肉をつまんでいる。
ってか、思ったんだが……シンドバッドおじさん。

おじさん…ぶっ…
噴出さない様に、無表情を取り戻せば
心の中で大爆笑口の端が自然と上がる。



「とにかく!!俺の用件はひとつだけだ…シンドリアとの船舶貿易を再開しろ!!」




巫山戯モードも程々に、シンドバッドが本題へと戻す

目の前の机を叩き、大きな音ともに
そう告げる。


「シンドリアは島国だ、船舶貿易なしには立ち行かん。主要な貿易相手のバルバッドを欠くわけにはいかん。それに交易を始める時に、先生…お前らの親父さんにとても世話になった。両国の信頼を失いたくないんだよ」


「ハァ…悪いけど、交易再開はムリでし。」
「なんで!」

「それはでしねー!今バルバッドは国内の大問題で手いっぱいなんでしよ!」


「国内の、大問題ィ?」



国内の大問題、聴く所によれば
国内で「霧の団」なるスラムの人間たちの集まりが、帰属の家に侵入し金品を奪っては国民にばらまいているらしい


しかも、それの頭が――――。




「…………ほ〜〜〜お。なんとかしていいんだな」


「!?」





護身用の小刀を抜いたシンドバッドは、そのまま机に音を立てて突き刺す。





「俺がその霧の団とやらを退治してやるよ。軍隊も使わず俺たちだけでな!」



「「………!?」」
「ム、ムリでし!!幾らシンドバッドおじさんでもルシリスがいたとしても!」



途端に震え上がる二人










 ― ◆ ―



「っ…あっはははははは!はははっ、ひー…やべ…ははは…」




バルバッド王宮を少し離れた場所

一つの大きな笑い声が上がり、金色が笑い腹を抱えて悶えている。



「笑いすぎですよ、ルシリス。噎せないでくださいよ?」

「だ、だいじょぶ…はは…あっははは……ヤバいこんな笑ったの久々かも、はは…しれないっ」

「そんな笑うことなんてあったか?」
「はは、君には分からないし。教えねー」



腹を抱えヒーヒーと笑い悶え、マスルールに背を摩られてるルシリスは、先程の事で笑っているわけで
あの二人とは何と無く仲も良いが、それよりも
あの顔と驚き様。

それに何より、裏で何考えているのか



全部この俺には、筒抜けなんだ―――。


こんな楽しいことったら、無いよな


おさまれば、ありがとうとマスルールに言えば頷くだけで、けれどそれが俺らなりのコミュニケーションの一つ
基本俺が十喋って、マスルールが一話してくれる。
それでも話し続く。

あ、俺がお喋りな訳じゃないからな?
俺基本あまり話さない、ってのは嘘になるな。
話す時と話さない時の差が激しいかもしれないな…ほら、あんときとかあのときとか←


灯厘は、二人。
アラジンとモルジアナの所へ、置いて来た。
一応王宮だし、灯厘を取られたくないってのもあるが、見せるのが嫌だ。何と無く。



「なぁー、眠い……」

「お前いつも起きるの昼過ぎだもんな…ってよくそれで旅できるな?」
「出来るだろ。ってか、俺朝ちゃんと起きてる。夜シンとマスルールが寝かせてくれないから――――」



ガシャン

そんな音ともに、部屋に一旦戻った為
物を運んでいたジャーファルが何かを落とし、そんな音が響く



「………ま、まさか……二人…」
「ち、違うからな!?誤解だ。ルシリス、お前も誤解を招くような話し方するな!」

「本当の事だろ。俺の事根掘り葉掘り…ずっと聴いてくるし寝たいのに起こしてくるし、まぁ…マスルールに添い寝してもらったから良いけど」



何と無く何時も、俺の後ろにマスルールがいるのは気のせいなのだろうか。
そう考えつつ、話すと

シンは必死に弁解していて、扉が開くと灯厘が来たようで飛びついて来て舐め回してくる。
それを受け止めながら、話すと最後の方は誰にも聞き取られることなく




「あー、俺昼食良いや…眠いから灯厘と一緒に寝る」


「?良いのか?昼飯食わんと動けないぞ?」
「大丈夫、其の辺の人間と俺は違うんで」

「………しかし、睡眠不足も……」



悩んだ末、俺は置いて行って貰える事になり
布団に入るなりすぐに意識がそのまま飛んだ。







 

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