月影と愛されし君 magi

□23
1ページ/1ページ








煌に来てから、かなり経った…気がする。
だけかもしれない

そうは言っても、み月。
長いようであっという間、シンドリアで過ごした期間よりもかなり短い

それでも、そろそろ此処を出てもいいかもしれない。そう思い始めたら何時も
居た場所を出て行く、怪我も完治して動かしても何の違和感もない


「はぁ〜〜〜…」


何時もの木の上

何時もと変わらない周り
本当に何もない、強いて言えばこの国の黒いルフが微かに日々増えている事ぐらい

それぐらいしか見るものが今のところないのだ



「………………そろそろ、か――」


「何がだ?」
「あー、ジュダル。おはよう」



ふと視線を逸らせば見える黒、こちらへと近付いてくる彼は浮遊魔法で空中散歩中だったらしい
手を伸ばせば、彼の頭を撫でる。

最近の俺のブーム。
ジュダルに会ったら必ず頭を撫でる
何故かは分からないが、彼の頭を撫でるのが好き


「何で毎回毎回撫でてくんだよ」

「なんでだろうな、俺もわからん」
「餓鬼扱いすんな」
「十分餓鬼だ、俺よりも下なんだから」


そうすれば、不貞腐れたような嬉しそうな顔をする黒い黒い黒猫
微笑み頭を撫で回せば、腕を引かれる。

彼と同様に浮遊魔法を使えば、嬉しそうに笑う



「笑ってれば可愛いのにな、ジュダル」
「可愛いってなんだよ、可愛いのはルシリスの方だろ、野良猫」

「はは、飼い猫が野良猫の俺に何の用だい?」

「お前、此処出てくんだろ―――…」



何で彼に分かったんだろう
あ、俺の独り言聞いてたのか

木に戻れば幹に寄りかかり、相手を見る
そうすれば少し先の木の太い枝に立つ、腕を組んでいるその様は、まさに仁王立ち…と言った所だろう



「まぁ、みつきも居たからな…そろそろ、出て行く」

「…………」

「そんな顔するなよ、ジュダル。またそのうち戻ってくる」
「戻ってくるな」

「?」


「……」
「そんな苦しそうな顔で言われてもな。どうしたんだ?」
「言えねぇ、けど…良いから…うちの親父共に目付けられてんだ…」


自覚しろ

そう言った彼。
自覚はしてるつもりだ、何時も俺は狙われてる気は緩められない
緩めてるけどな、ほら今とか

誰かと居る時は何時も緩む。

目の前まで来たジュダルは、ドカッと座り真っ直ぐにこっちを見る



「前は強いし、白くて綺麗だ…黒く染まったらどれだけ綺麗か……見てみてぇ、けどそれでも俺は――」


「俺は黒くならない」

「ッ、けどな!」
「ジュダルが気にしてる事なら、気にしなくていい」



黒になるつもりは、更々無い
それに、第一あいつらの手先になるとか考えただけで吐き気がする。

それに、俺の親だってそんなの望んでないしジンたちも望まない



「さてと、そろそろ行こうかな――…。出るなら早い方が良い、ジュダル皆に伝えといてくれるか?俺はまた旅に出たってさ」



所持品は全て持っているし、部屋のものは全部ここのものだから何も持って行く物はない。
それに、旅だ…軽い方が良い

そう言うなり白い布、絨毯を広げれば飛び乗る



「…………これ、やる」



近付いて来たジュダルが出したのは、黒に真っ赤な宝石のついた刀



「?どうしたんだ?これ……」
「…お前、に……似合うと思って、刀沢山持ってるから邪魔かも知んねぇ、から邪魔なら捨てればいい」


「捨てる訳ないだろ?ありがとうな、大事にするよ。」



受け取れば微笑み、相手を見て礼を言う
目の前には真っ赤になり顔を逸らしたジュダル、首を傾げれば彼の腕を引いて抱き締める

驚いているのか、全く動かない



「ありがとう、それじゃあまた―――」




軽く頬に口付ければそのまま、煌から飛び去る。








一章END

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ