月影と愛されし君 magi

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起きたら、目の前に紅明
後ろに何かあると思えば、見慣れた桃色
紅覇が後ろに抱きついて寝ていて、全く動けない。
紅明本当、寝てても凄い力で抱き締めてくるもんだから…それに兄弟異母だとしても力が強い紅覇に起きて早々苦笑を溢した

動けば二人の腕が強くなる


本当に寝てんのかって聴きたくなる、全く。
軽く魔法をかければ、そのまま腕をすり抜け刀の帯を腰に巻きつけて部屋から出る



「んん〜〜〜っ!」



大きく伸びをして、今まで動けなかった分固まった身体を解せば声が漏れる




「ふふふ、あら…ルシリス…よね?」



その時後ろかかる声に咄嗟に振り返る。
後ろにいるのは、今声をかけてきたのは間違いなくこの国に巣食う女狐、練玉艶その人で

俄かに目を細めれば、微笑み



「お久しぶりですねぇ、最後に会ったのは何時でしたっけ?」
「あら、そうねぇ…何時だったかしら……それより、それ程までの力と……それを持ってなんでこちら側に来ないの?」

「………興味無いんで」



剣のつかさに手を乗せ何時でも抜ける様に、そして相手に気付かれないように構える。
何時でも、応戦できるように

しかし、玉艶はルシリスに近づくと両手を伸ばし刀に乗せる手に手を重ねあいた片方の手で頬を撫でる
ルシリスは顔色一つ変える事無く、玉艶の後ろに居る人物を睨む



「…そんな顔しないで?貴方の顔が、勿体無いわ――…可愛い我が子達と、仲良くしてもらえてるかしら?」



あぁ、面倒臭い…

目の前の人間を見れば、微笑み。はい、なんて応える



「そう、なら良いわ。貴方が今此処で私を殺しても…いいのよ?」

「………面倒臭い事は、しない質なんで。良いですかね、俺…アンタと俺は分かり合えないし、分かり合うつもりはない…アンタがアンタでいる限り」



一歩後ろへと下がると、玉艶が抜いた触った刀をひと振りし一瞬で武器化魔装すれば斬りかかる―――



「残念ね…でも、何時か堕ちる時を……私は楽しみにしているわ可愛い…私達の…ルシリス」

「……ッく!」



刃はあと少しで届かず、そのまま後ろへと吹き飛ばされれば城の門の屋根の上に軽く着地する。
武器化魔装程度じゃ、駄目って訳か

服についた埃を払えば、溜め息を吐く。

ただの挨拶程度だったが、向こうは結構本気で来てた。



「はぁ………詰まんねぇな…つまんね…」



門の屋根から降りれば、近くに有った石を蹴り飛ばす、すると結構な距離飛んでいった石が落ちる誰の頭に落ちようと当たろうと今はそんなこと知ったこっちゃない
イライラしながら歩けば、目を細め壁を殴る。
壁は穴があき手の甲から血が流れる、当然あんな硬い壁をあれだけの力で生身の拳で殴ったのだから
しかし、本人は大して気にしている風もなく中庭を歩く



「あ、おい…おいルシリス………ってどうしたんだその手!?」


「………あぁ、ジュダルか。おはよう…これ?…どうしたんだっけ……」

「どうしたんだっけってお前……それより、あの女に会ったのか…」
「会ったなそう言えば、数年振りに」



声をかけられれば、無言で歩いている時からは想像できない程の満面の笑みを浮かべ振り返り
後ろに居るジュダルに笑いかけ

微笑み相手を見る。

どうしたんだと、ジュダルに問われるもさも知らなかったと言わぬばかりに先程の衝撃に震えて血が流れる自分の右手を見やる
その目には何も色が写っていない、ただただその怪我を見るだけ
ジュダルはそんなルシリスの様子に、驚いたような悲しいような表情を表せば



「久々に会ったのに、あの人全く変わらなかったな。歳と外見が合ってねぇよ、ホント」



ケラケラと笑い話すルシリス



「……………」

「どうした?ジュダル」
「…………近い内に此処出て行け」
「俺が来たときあんなに喜んでたのに、どうしたんだ?急に」
「お前に、こっちの世界は似合わねぇ」




「こっち…あぁ、アル・サーメンの話か?それなら、別に俺行くつもりないから安心しな……それに、必ずお前をこっちに引き摺り戻す」



軽い様子のルシリスに、ジュダルはそういうもルシリス、とうの本人はそれを笑い飛ばし大声で笑う
笑いすぎて流れた涙を拭いながら、話す

独りでに大声で笑したかと思えば、直ぐに真剣な表情で、一見すれば睨んでいるようにも見えるその鋭い目つきでジュダルにそう言う
表情があまりにもころころと変わるルシリス
はっきりと自分の気持ちを表せば、真っ白いルフ達がザワつきジュダルの近くまで向かう。
ジュダルの真っ黒いルフはそれに、近付く事無く後ろへと下がる


黒くて綺麗だが、彼に黒いルフは似合わない




「それじゃ―――」



微笑み血が流れる手を振れば、自分の部屋へと戻る







 ― ◆ ―




「ルシリス―――…ッそ、その手は!?」



真っ直ぐ廊下を歩いて帰れば、部屋の前にいたのは今日の昼まで俺の目の前に居た紅の彼で



「ちょっと遊びすぎて―――」





 

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