月影と愛されし君 magi
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肌が焼けるほどの強い日差しの下、一つの影がふらふらと歩く。
時より天を仰いでは、ため息をつき、動く度に耳に着けているピアスがしゃらしゃらと鳴り背負っている大太刀が金属音を立てその影はまた
空を仰いだ。
「………あ゙ーつい」
そう、彼がこの話の主人公―――…。
― ◆ ―
暑くて死にそうだ…飲み物調子にのって飲むんじゃなかった。
水筒の中身を見ながら呟き歩いて行くものの、やっとの事で町に着いた。着けば真っ先に果実を買って水分補給。
店で果実を買えば、一つおまけで貰えたのだが
やっぱり、女に見えるかな俺は。
この街も、白と黒のルフが入り乱れている
「……何か、愉しいことはねぇかな…」
呟くと、ブレスレッドを撫で
その瞬間、背後から声をかけられた。
「…あの」
「はい?」
「貴女もしかして、迷宮攻略者ですか?」
「………はぁ…?」
振り返れば、俺よりも少し大きな紫色の髪が目立つ如何にも貴族のような格好の男。
あーそれよりも、俺のこと女だと思ってやがるなこいつ
そう思うが、早く女の声の方で微笑み受け答えをした。
見たところ、この前にいる男も迷宮攻略者だろうか、しかも7つ…世界には俺よりも多く持ってる人間もいるのか
世界は広いなぁ、なんてすっとぼけたことを考えていると肩に手を回され……ん?
「あ、あの、ちょっ、と……」
「これから一緒に飲みには行きませんか?お嬢さん」
「いや、わたしこれから用…が…」
「あぁ、それは残念だ。3つの金属器を手に入れたその話を聞きたいと思ったのですが…用があるのなら仕方無い。また明日も会えることを願いますよ」
流石にまずい、こんな奴に連れていかれるなんて
そう直感したため急いでその誘いを断る
断れば何だか、案外簡単に諦めてくれた様でほっと胸を撫で下ろして居るのも束の間、急に左手が取られれば手の甲にキスをされた。その瞬間相手の香水の匂いで軽く目を細めた
においに元々敏感だからか、相手のそのにおいはきつかった。
すぐに離れれば、遠目に今日泊まる為のホテルを探して足を勧めたのだが、少し大きな所のホテルに決めてそちらへ歩いて行こうとすると、その男は同じ方向についてくる気配。
…後つけられている?
「……………」
急いで路地に入れば、後ろの男がその路地を覗く頃には俺はもうそこにはいない。
人の家の屋根の上を飛ぶように移動して行けば、ホテルの前につき泊まる手続きをし部屋の鍵を受け取り部屋へと行く。
部屋は少し奮発して、高めの部屋を選びそこにつけばベッドに潜り込みそのまま眠った。
それもすぐに、自分の空腹の音で目が覚める
「……そういえば、果実以外何も食ってねぇのか…」
それじゃあ、腹が空くわけだ。
思い出し、直ぐ様着替えてホテルの中にある食堂へと移動すれば一瞬にして固まった。
「「あぁ!!」」
「……急に大きな声出さないでくださいよ…誰です?シン」
「…いや、今日見掛けた迷宮攻略者の女性だ」
「迷宮攻略者?!」
「俺、男なんだけど?」
「「…………え?」」
いやいや、え?じゃなくてよ、俺は男だ。まぁ、確かに?女みたいな顔だし声だって女声出せる
けれども、俺は男だ。
大事だから二回いったんだぞ、俺は男
何かと便利なようで、不便だけどな…時と場合に寄る
食事場所に行けば、その男ともう一人白い髪に緑色のクーフィーヤを被った男の姿がある
一般人からみてもその二人は、金持ちと従者だろう。
「それより、何でお前がここにいんだよ、お前から態々逃げてきたのに…」
左手の甲を自分の服で拭きながら言うルシリス。するとひきつった笑みを浮かべる相手
女好きな奴が、良く分からなかったな。相当、俺の変化が上手いってわけか
「女ったらしのあんたが、良く俺のこと分からなかったな?」
「あのときは、お前女の声で話していただろう!」
「あれー?そうだっけ?」
「っそれより、名は何て言うんだい君?」
「人に名前言わせるんなら、自分から名乗りなよ」
「っ、お前誰に向かって口を聞いて―――…」
「こっちのはジャーファル、そして俺は……場所を変えようか?部屋に食事を持ってきてもらおう。俺の部屋でゆっくり話さないか?」
「べつにどっちでもいいけど、飯奢ってくれるんなら行く」
ルシリスのそんな態度に、ジャーファルは一歩前に出ようとしたものの
紫の彼の手によって止められた。
奮発して此処に泊まったから、節約したかったとこその提案には直ぐ様乗った。
丁度いい、暇つぶしにもなるだろう。