月影と愛されし君 magi
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あれから、取り敢えず大所帯での移動は好まないため4人には連絡用にルフの瞳を渡し一人でレームへと向かった
彼らもこの数十年眠っていたわけだし、色々この時代に慣れてもらうほうがいいだろうとなんだかんだと言い訳付けての逃げ。
お金も無駄に持っているから、それを分けたらいらないと言われたが押し付けてきた。
それにしても、あんなところで会うなんてな…。
考え事をしていれば、気付けばそこはレームの闘技場
一先ずその前に行こうと思った場所へと行けば、見えてきた剣闘士養成所とその入口に立つ一つの影
「………!」
「久し振り、トトちゃん」
「な……ルシリス……か?本物…?」
「はは、俺が本物に見えないのか?なんなら、一戦交えたって良いんだけど」
「っ、トトルシリスと戦うの嫌だ」
「………ショックだ、俺」
はっきりと断られ、ぐずぐずと泣き真似をすれば後ろの扉が開き
「久し振りだな、ルシリス」
昔に鍛えて貰った師匠の様な人。
「して、久しぶりに顔を出しに来たということは…闘技場の試合に出たいのか?」
「いや違う、今回は挨拶だけだ…無駄な賞金増えても困る…取り敢えず中々顔出しに来なかったからな。一応挨拶に来ただけだ」
「そうか、ならば挨拶だけか。つまらぬのう」
「ははは、土産は渡すぞ?シャンバルさんにはシンドリアの酒、トトには剣に着けられる俺からのお守り」
「おおー、上物の酒だなこりゃ」
「……………ありがとう…」
「おう、じゃあ俺はレームの城の方へ行くから―――」
にこにこと久々の挨拶を済ませれば、他の人間にもよろしくと伝え土産を渡し剣闘士育成所を後にした。
向かうは、レームの城の方。
― ◆ ―
暫く歩いていけば、街中に見知った色の髪が揺れたのが見えた
急いでそれを追いかけていけば、相手も気づいたように振り返った。
「ルシリス!?」
「ムー、久し振りだな」
「っ…………俺は夢を見ているのだろうか、早く城に帰ろう…」
「馬鹿か?俺今お前の目の前にいるだろ」
驚きを隠せずに、夢だと言いだした相手に頭に来て思い切り頬を引っ張ってやった。
そうすれば、やっと気付いたようで頭を撫でられた
「会ってそうそう夢呼ばわりしたあとに頭撫でるか普通…」
「すまないすまない、会いに来ないからてっきり―――」
「はいはい、あーもうわかったよ俺が死んだんだって言いたかったんだろう!」
最低だ、なんて文句を垂れつつ城の方へと帰った。
「今回はどれくらい此処にいるんだ?」
「どうだろうな、でもそんなに長くいられないのは確実だな」
「……そうか…ルシリスは、此処に留まるつもりはないのか?」
「それは前にも言わなかったか?」
先程までの明るいムーとは打って変わり、真剣に話をし始めればルシリスは溜め息をつき見様によっては睨んでいるようにも見える目付きで相手を見れば
そのルシリス変わりように驚き、焦った
「っ……すまない、な……俺が何か悪いことしたなら謝る…」
「――…っ」
次の言葉を紡ごうと口を開けば、その瞬間飛んできた紅い影
反射的に太刀を背から引き抜けばそれの腹で、影からの攻撃を受け止めた。
自分よりも大きな男の、しかもファナリスの蹴り
「防がれたか……」
「防がれたか、じゃないだろロゥロゥ!!怪我ないか―――…っ!?」
「久々に会って挨拶がそれかよ………」
「おぉっ、久々のお前のその目はほんとにそそるぜ!コイツも一応はファナリスの血を受け継いでいるんですぜ?」
「だ、だからって、今のは俺が食らっても死ぬぞ…」
受け止めた剣は無事だが、衝撃をもろに腕に逃してしまったせいか震える腕。もげなかっただけましかとイラつきから睨むが
当の本人、ロゥロゥは全く悪びれる風もなく寧ろ癪に触るような言葉ばかり並べ
本当、此処に来ると発作の時の様に暴れたくなるから困るとため息をついた。
父親の父がファナリスだったらしい、先祖返り。髪の色は父は紅色だったが、自分は基本見た目は母親譲りなため、力のみ受け継がれた。
それ以上に基本最大限に力が出せるのはリミッターが外れた発作が起きた時だけ。
だからこそ、発作なんて起こしたくないんだが此処に来ると彼らに会うとどうもやはり同族だからだろうか、血が騒ぐ。
昔からロゥロゥは何時も、俺をおちょくっては発作を呼び出そうとする。
「……俺はお前の前で何か発作起こさねぇからな。」
「…お、おい……口調違くないか?」
「ハハハッ!!おもしれーな本当、俺の攻撃受け止められる癖にそれが本気じゃないんだからな」
「だからって、本気で来るなよ。俺腕しびれて今動かないんだからな」
太刀を何とかしまい、顔を殴ろうとするが軽々と躱され拳を受け止められれば逆にその腕に魔法で電流を流し同じく痺れさせてやったら
そこでやって来た今度も紅い影を受け止めた。
「ルシリス!!今まで何処に行ってたのだ!」
「ミュロン、久し振りだな」
「バカルシリス!!」
「っ、危な…」
抱きついてきたのはミュロンで、頭を撫でてやれば殴られる寸前でミュロンの腕を掴み止められた。
「心配したんだぞ!何の音沙汰もないし!」
「…ごめんな」
苦笑し頭を撫でれば、ごめんと言い。
後ろのムーは溜め息をつき、ロゥロゥは欠伸をしていた