月影と愛されし君 magi
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「ルシリス様…――!!!?」
離れた場所から名を呼ばれれば、ルフたちがざわめき眩しい光に目を細めれば四つの影
― ◆ ―
それからレームに向かって一日が過ぎ
シンドリアを出てから一日でレームへと着いた。
一度も絨毯から降りずに、灯厘と二人で過ごしたが食べ物はあるし暑さ寒さも感じない適温になるように結界を張ってあるし
少々寄り道を、と直感的に少し前の街へと降りた―――。
それがそもそもの始まりで
「あぁ、良かったわ…もしあの時わかってもらえなかったら私どうしようかと……」
「そうですねぇ、私たちもそれなりに身形も変わってしまいましたし」
「それにしても大きくなったなー皇子も」
「もう、皇子ではないだろう。」
「何で、お前らが―――…セシリア、アクイル、リュート、エルド……っ」
目の前には、見た目こそ変わったものの前の雰囲気や色を残した彼らの姿があった。
「話せば長くなるのですが……」
「私たち最後の最期でジンと一体化…したの。私はフラウロスの眷属、アクイルはマルコシアスの眷属、リュートはゴモリーの眷属、エルドはマルバスの眷属よ」
「けど、あの時母さんは…“もうあの子達は”って」
てっきりもうみんなは死んだものだと、と顔を伏せれば四人は其々にお互いの顔を見合わせやれやれと言った風に溜め息をつき
今度少し前に出たのはエルドだった。
セシリアは辛うじて元の姿に近く、白髪に赤い瞳に豹の耳と尾、身長は四人の中で三番目。
アクイルは四人の中で二番目に大きな体の、狼の頭を持つ屈強な体つきの姿で漆黒の毛色に琥珀色の瞳で一見分かりにくいが表情や声やらルフやらで分かる。
リュートはゴモリーの眷属であるため特には変化はないが容姿は中性的でどちらかと言えば女よりで髪は黒に近い深緑色で瞳はエメラルド色。
エルドは真紅のたてがみを持つ四人の中で一番大きい獅子の姿、金色の瞳。
これは同化を果たしてしまった証。
「人ではなくなったと、言いたかったのだろう…」
「なら、あの後何処にいたんだ!!」
「っ……それが、私たちはルティス様によって封印されていたのですよ…」
「封印?」
「同化したが、俺らはかなりの瀕死の状態でほぼ死んでたのに等しかった。しかし、ルティス様はその身が危ないのにも関わらずルシリス様をその場から退け我らを封印することで自らの全ての力を俺らの復活のために使い切り……」
あの後、そうルシリスが声を荒げれば四人が身をびくりと震わせ俯き口を開くのを躊躇したが、やはり先に出たのはエルドで
エルドが語り出せば、皆唇を噛み締め手を握り締めその話を聞いた。
「我らは、ルティス様に助けられたこの命ルシリス様に御預け致します。剣とも盾ともお使いくださって構いません。此処で死ねと言われれば全員死ぬ事も厭わない、そう心に決めルシリス様を今まで探してきました。」
「その立派なお姿を一目見たいと、そう願い各地を移動し」
「我らの願いはルシリス様をお守り致すことのみ」
「主である貴方が決めてください――――」
全員が右手を左胸に当て跪けば、言葉を順に述べてゆきルシリスの言葉を待った。
「…………俺はもう、皇子でも王でも…何でもない……第一綺麗じゃない…この手は、この身体は…あまりにも汚れすぎた」
だから――――…、そう言葉を述べようとした瞬間
「何をおっしゃいますか、ルシリス様」
「ルシリス様のみが我らの王、主です」
「子供の時以来ですね、こうして私たち四人が話すだなんて」
「………ああ、そうだな…懐かしい」
自分よりも身長が少し大きい、セシリアに抱きしめられその周りに集まる三人に頭を撫でられ若干モミクチャにされ周りの景色や彼らの顔が歪み頬を流れる生暖かいもの。
拭いても拭いても溢れるそれは、セシリアもリュートも同じらしく
「それにしても、コイツは眷属2個も掛け持ちか?」
《…ガルルルルルゥ…》
「灯厘、こいつらは敵じゃない…父さんの眷属だ」
「あら、違うわ。ルシリス様の眷属よ」
「?」
「ジンたちには認められているからな」
その日は一日、五人と一匹で話し合いをした。