月影と愛されし君 magi

□62
1ページ/1ページ











目を覚ませば、視線を感じ横を見ればベッドの半分程使って体のでかい灯厘が横に丸まってこちらを見ていて、目が合えば顔に鼻を寄せその特有のざらざらした舌で舐めてきた。
大きなその鼻の上を撫でれば上半身を起こし、若干の目眩に目を細めつつ

起こしたと同時に扉が開き誰かが入ってきた。



「やっと目を覚ましましたか…」



軽食を持って現れた彼は、ジャーファルで

近くの机の上に置けば近づいてきて額に手を当てられ、少し冷たい彼の手に目を細めそのまま閉じ



「もう少し警戒したらどうなんですか?」
「警戒もなにも、ジャーファルはジャーファルだろ?それならなにも警戒することないだろう?」
「それより、あなたが半分――」


「それは、俺の目の前でも誰の前でも言って欲しくないな。半分堕転してようと俺は俺だ、黒に飲み込まれるなんてこと有り得ない……まあもし、俺が堕転するようなことがもしあれば躊躇無く殺して欲しい。まあーそんな事、ジャーファルには頼まないけどな」




自分の始末は自分で付けるつもりだ。


そう、くすりと笑えば額から手が退き、するりと布団から降りて身支度を整え始めるた。
付けるものなどは全部灯厘が運んでくるため、それを受け取りつけるだけ
ジャーファルはその間布団を直してくれていたようで
振り返る頃には綺麗になっていた



「流石政務官様」
「止めてくれますか、しかも馬鹿にしているでしょうそれ」
「じゃあお母さんがいいかい?」


「…………」


「ん?怖いなそんな顔しないでくれよ」




怖い顔になったジャーファルを見れば、くすくすと笑みをこぼし冗談じゃないかと、否定すれば
目の前でため息をつくジャーファル
すると、ルシリスは何を思ったのかバルコニーまで歩いて行けばその手摺に飛び乗り腰掛けた
一歩間違えば下の地面まで真っ逆さまだ。

ルシリスからすれば、そんな事。なんて程度の高さだ。



「落ちないで下さいね」

「ふふ、俺が落ちるわけないだろ?そうだ、俺そろそろ行きたいところがある。」
「また、ですか?私に聞くまでもなく貴方はどこへでも好き勝手に行ってしまうじゃないですか。」
「それもそうなんだけど、一応の居場所は言っておくべきかなって。俺がどこにいようが何してようが関係ないって言われればそれまでなんだけどさ」



一応な?と言えば、後ろに広がる島の全域と遥か向こうまで続く海を見据え




「レームに今度は遊びに行こうと思ってる。レームには中々行く機会がなかったからな」
「それで?いつ此処にまた戻ってくるつもりですか?」

「今度はかなり長いこと会うことはないな。」



今度は、そう聞いてきたジャーファルにこれからのことを考えてか子供のように無邪気な笑みを向け話せばジャーファルの顔は微かに歪んだ。
しかし、ルシリスは知ってか知らずか話を続ける。

これから、何か起こりそうな予感がする。
これは前のあれにも似ている、楽しそうであり不幸の予感
何時、何処で、何があるかはわからない、だからこそ色々な所を回って情報収集をしなきゃならない。
第一にいろいろな国にそれなりに知り合いが沢山いるからそれを見にも行きたい。



「そろそろ出ようと思う」



そう言えば近くに来た灯厘の頭を撫で、ジャーファルを見て目を伏せれば大欠伸を一つと大きく伸びをしてから手摺から絨毯に乗り換え灯厘を乗せ
高く舞い上がる。



「挨拶、してないな……どうする?灯厘」
《がう》
「………ま、いいか。今度はレームだ。灯厘レームは初めてだろう?久々に彼女たちに会いに行こうと思うんだ。シンドリアや煌とは最近濃い付き合いだけどレームは久々だ」





空高く舞い上がる絨毯

青い空に青い海に小さな島がひとつ。
今まで過ごしてきた小さな小さな、明るい島。












 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ