月影と愛されし君 magi

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何時もの如く、暇潰しに散歩という名の城内偵察。灯厘はマスルールに預けてある。
預けるというか、灯厘が結構懐いてたりするからだ…灯厘も結構人懐っこい所あるから今この城の中仲が悪いのはシン以外にいないと思われる。

どうしても、灯厘はシンが嫌いらしいあとシャル

シャルの場合は、なんだか何時も目が合うと灯厘が鼻で笑うらしい
嫌いと言うか、それは馬鹿にしているだけらしい。


「ふぁ……ねむ…」


歩くといっても、此処は城の屋根の上

丁度今は、その話をしていたシンの部屋の上



「ルシリス、居るんだろ。降りてきたらどうなんだ…それとも盗み聞きか?」
「あー?あ、白龍」

「ルシリス殿っ!?」

「あれ、俺もしかしてお邪魔?なら消える―――」
「お前にも少し話を聞きたい、一緒に聞け」



呼び止められれば、屋根の縁から足を垂らし話を聞いているがどうも
俺にも関係ある話らしい。

白龍の後ろに降りれば、二人の様子が変わり
明らかに白龍が殺気立っている



「で?君の目的とは何だ!?」






「煌帝国を、滅ぼすことです。」






後ろに立っていたルシリスも流石にそれには驚き、目を見開き驚き下唇を噛み締めれば手を握り締め気持ちを抑えて
腕を組めば、バルコニーの手すりの上に座る


確かに今の煌帝国は駄目だ、けれど……今の様子の白龍じゃ何も出来無い。憎しみ悲しみただそれだけに囚われている。
すると、口を開いたのは



「俺はそれには参加したいんだが、どちらにも俺の大事な人がいるからな…俺は俺のやり方でいいなら白龍側についても構わない。そろそろ煌にいこうと思ってたとこだ」
「っ、ルシリス……」

「人間はどうも領土に拘る。なんなら、俺の国を復活させるのも面白そうだし…ま、そんなことしねぇけどな煌帝国にはちょっとした執着があるんでねー」



まあ、俺を雇うのは高いよ。とクスクスといつもの体で言えば
ありがとうございます。なんて言う白龍に笑えば



「………お前はどこにつくつもりなんだ。」
「俺はどこにも飼われるつもりはない。好きなときに好きなやつのそばに居るそれが俺だ」
「はぁ〜〜〜〜…本当にお前は自由だな……(そんなところも好きなんだがな)……なるほどね…君と煌帝国の事情はよくわかったよ………」


「では…ご助力いただけるのですね?煌帝国との戦いに。」


「……………断る、と言ったら?」
「!」





今までの話の流れならば…という白龍の淡い期待を潰すようにシンは言葉を出した。

しかし―――、





「そのような大それた企てを、易々と他国の王に明かすなど浅はかと言わざるを得ない。今の話全て皇帝に献上すると俺が言い出せば、君はどうなる?」

「…あなたはそうはしないと思っていますが…無論、それも覚悟の上です。あなたの信用を得るためには命をかける覚悟です。そのため今俺にできるのは、隠さず打ち明けること…そう判断しました」



終始、白龍は自身の前で手を合わせ話をしている。そんな光景をただ黙って見ているのが
それに加担すると言ったルシリス。
シンドバッドの見える位置、白龍の斜め後ろに移動していて手摺に腰掛け話を聞いている。

が、何処か上の空に近い



「………………そうか。…わかった。」

「!」

「しかし…まあ君は「留学」に来たんだろう?まずは、この国をゆっくりと見ていってほしいものだな。」




参の意が感じ取れた白龍の顔はきっと緊張もなにも解けたかもしれない。

しかし、その次に出た言葉に焦りが出た
そんな様子ですら、無表情に近い顔で見ているルシリス。シンドバッドはそれにも気づくが
こちらで話している手前話をそらす訳けにもいかず


「そんな時間はないのです、シンドバッド王よ。今すぐ返答を!」



白龍がそう声を荒げれば、シンドバッドの顔を見て怯んだ。

無表情、拒絶とも取れるその表情。
彼の後ろにいる人物は口角をあげ、笑みを零す



「話の続きがしたければ、君はもっと学びなさい。」
「…………」
「外の世界のことを、そこに住む様々な人のこともね」
「……………」
「それにはまず…君には会って欲しい人物がいるな!」




その先を聞いた白龍は驚いていたが、話が一通り終われば部屋から出て行った。
その瞬間に笑い出すルシリス


「あっははははは!!やばいやばい…シン、君のその顔大好き俺。その無表情な顔―――…でも、少し違うんだよなぁ…」
「なんだ急に……」
「ん?別に?俺が君を好きだと言って、何が悪いんだ?あ、けど勘違いするな。その表情が好きなのであって…恋愛感情なんてない。鳥肌立つような、背筋がゾクゾクするその顔が好きなんだよ俺…」



急に笑い出したルシリスは腹を抱え、涙を流しながら笑い涙を拭えば手摺から降りて自分からシンドバッドに近付き手を伸ばし相手の頬に触れる
身長が低くて少し背伸びしたのは置いておこう。
恍惚とした表情のルシリスは、今誰が見ても誘っているようにしか見えないだろうが本人にその気は全くない。
しかし珍しいことに、素直に感情を表現する相手にたじろぐシンドバッド

シンドバッドが手を伸ばしたところで、するりと抜けて少し離れた場所へと移動してしまう。手が届きそうで届かない。気持ちも同じ


「それにしても、シンドバッドのそんな顔が見れるとはな〜…と、取り敢えず俺はそのうちまた煌帝国に戻る。」
「お前は何なんだ本当……」
「何って……、俺は俺ルシリスだ」
「……そういうことじゃなくてだな―――」

「君が言いたいのは、マギの護人って所だろう?」

「………」
「それであろうと何であろうと、俺は俺だそれ以外の何でもない…俺は俺の思うままに動く。マギは…お気に入りは誰ひとりとして死なせたりしない。それが俺のやるべき事……白龍を見てると思い出すんだよな、俺の昔の自分を…無知で白くて何をするにも純粋な考え見方…そして、間違いをも恐れぬ強さ、無知ゆえの弱さ。若いっていいな」


そう、今の自分にはその殆どが…一部を残して自分には欠如している。
自分はもう白くなくて、色々知りすぎて汚い。
黒い黒い

そんな自分が嫌いで大好きで、大嫌い。




初恋の想い人、彼は既にもうこの世にはいない。

――――…練 白雄。


子供の頃一度会ったきり、二度目は無かった。
その時には、煌帝国には彼は居らず居たのは白瑛と白龍、白雄白蓮の姿はなかった。
聞くまでもなく、彼らがもう居ないのは直ぐにわかった。小さな白龍の顔には大きな火傷の痕、それの真実がわかったのはそのずっと先だった。
自分もそれなりに身体に大量の傷は残っているし、心の方もかなりやられてた時期
紅炎や紅明や紅覇や紅玉、最初は馴染めることなく一人で過ごした。
それでも、白龍や白瑛は色々と構ってくれて色々遊んだりもしたが。その時の自分の傷はあまりにも深く

今俺がこうしてにこにこしているのも、ある意味自己防衛の一つなのかもしれない。

だからこそ、紅炎とも紅明とも色々あったが…まぁ今でも俺の事を構ってくれる



「…………」
「考え事か?」

「さてと、そろそろ彼らをこの近くにある迷宮に送り込もうって考えてるんじゃないか?」

「…………」
「俺にはお見通しだからな、どうでもいいけど。俺は迷宮には入らない。」
「俺たちと同じ理由か?それは」
「いや?他のジンたちが嫌がるんだよ。まぁ俺も彼らが居ればそれ以上の力は要らない。持ちすぎた力は身を滅ぼすってね。ただでさえ魔法も使えてジンの金属器も使える俺は異質すぎる存在なんだから」




そう、普通なら…普通ならば魔道士は魔法。
金属器使いは金属器使い、相容れない者。それなのに、俺は此処に存在している
もしかしたら、俺はこの世界のイレギュラーなのかもしれない。

なんて、少しネガティブにも考えてみたりした。
結局そんなことなど、どうでも良いのかもしれない







 

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