月影と愛されし君 magi

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目を覚ませば、光が眩しくて少しずつ慣らそうと目の上に腕をおいた。
あまりにも眩しいからかなり目が痛かった

身体の感覚も戻ってくれば、何故か隣が重たい。



「……………」



周りを見渡せば、此処は絶対に俺のベッドなはず…なのに何故、何故これが俺の隣に寝てるんだ?
紫色の…この露出狂男が。
しかも、毎度お馴染みの全裸…下はそれは布団がかかってるけれども

目を細め、ちょっと離れてから布団から出ようと動けば腰をガッチリと掴まれていて動こうにも動けない。
そう、動けないんだ。俺はさっきから動いてる。
腕掴んでどうにか逃げようとしてる、でも、だな腕が動かないんだ…俺こんなに力なかったっけ?あれ?



「何処…行くんだ……」

「いや、いやいやいや、此処俺の部屋だし?何処行こうと俺の勝手だろ?」
「お前…………」


「腰細いな」




もう一度動けば、布団の中。
思い切り体が密着しいている、がルシリスは服を着ているために素肌同士ではないだけましだろうが、逃げようと必死になっている。



「そんなことは良い、それより俺が帰ってきたのに…お前、迎えに来てくれなかっただろう?しかも、シャルルカンと廊下であんなキスしてたのに俺には無しか?」
「はぁ?あれは、あっちがしてきたからで、俺は関係ない。それに少し答えただけだし」

「ふーん、なら俺がしたら返してくれるのか?」

「っ……」



布団を被ったまま、シンドバッドに組み敷かれたルシリス。
しかも、両手首を布団に縫い付けられてしまえばどうにも出来無い。が、しかし―――。


「なぁ、キスしたら許してくれる…?」


その状態で、今目の前の人物を誘ったら確実に食われること間違いない。けれどもこんな朝っぱらから食われるわけにも行かないから



「っ………ゆ、るしてやる」



手の力が緩んだ隙に、腕を相手の首に回し唇を合わせればやはりそれでは済まなくて舌が入り込んできて自分まで我慢出来無くなりそうな程上手い舌使いで腔内を攻めてくる相手。
このまま流されてみても…なんて、シャルルカンの時と全く同じようなぐらい流され始めて
それを止めれば、口を離してもう一度と言わぬばかりに近づけてくるため口に手をやり止めれば微笑み

またこちらから唇を合わせて、頬を撫で



「いっ!!!」



「調子に乗らないことだな、シン。俺はそんな安くない」




一瞬の隙をついて腹を蹴り上げれば、流石にあれをまともにくらってすぐに動ける人間はそうそういない。
痛みに悶えて布団に撃沈している相手を放っておいて、服を脱いでゆけば後ろからの視線を感じたがそれは全部無視した。
幾ら俺の裸見ようと、彼は今は動けない
それが分かっているからこそ、此処で着替えられるわけである。

服を着替え終われば振り返り、相手を見た。


すると、結構回復したのか結構普通にしている




「……………」

「シンがそんな顔してんのキモチワルイな。なんだよ、俺の身体見て吐き気でもした?」



黙ったまま俯いているシンドバッド。
しかし、彼が見たのは背中だけで、それ以外は見られていないはず

それでも、辛気臭い顔している彼を見ているのが嫌で笑って



「……その傷は、殆ど…子供の頃のものなんだろう?」




あぁ、そこ触れてくるか




「あぁ、そうだなー。俺あの頃以上に痕が残る怪我なんかしてないし…だからってこの怪我見て気持ち悪くなるぐらいなら俺に近づかなきゃいい。触らなきゃいい、構わなきゃ―――」



自棄になって、背を向けそう言えば背中に感じるぬくもり。肩に乗る重み




「そんなこと言うな。俺は、軽蔑もしないし気持ち悪いとも思わない…だから近づくななんて言うな、触るななんて言うな、構うななんて言うな。俺はお前が大事なんだ…」
「はっ……君みたいな男の言葉、信じられるか………特に、お前みたいな……」
「そうだな、信じなくてもいい。でも、俺はお前を惚れさせてみせる」
「へぇ、精々頑張れ…」



「――――…」




耳元で言われた言葉はあまりに、昔言われた言葉に似ていて





「!?な、いてるのか?」

「は?―――……っ」
「っ、おい――」

「や、ば…止まん、ない……」



頬を伝った生暖かいものは、彼の腕に落ちたようでそれに気づいた彼に指摘されればやっと気づく

自分が泣いていたことに
しかも、それが止まらないときたら笑うしかなく
目の間の彼に抱き締められて、情けないことに胸を借りることになった。
一頻り泣けば、やっと落ち着いたようで。
軽く目を擦れば、シンドバッドに頬を撫でられ涙を拭われた



「………」
「…ん………」

「泣く程嫌だったか?」

「いや……ある人に言われた言葉思い出した…」




考えてみれば、俺あの頃から男の事が好きだったのかもしれない―――。


相手から離れれば



「久々に思い出せた、ありがとうなシン。」




今一番の笑みを見せたルシリスはそのままシンドバッドの目の前から姿を消した







 

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