月影と愛されし君 magi

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あれから半年、怪我も全部完治するには十分すぎる時間で


何時もの昼寝場所に居れば、下から声がかかる



「ルシリスー」




下からかかる声、仰向けになっていたため身体を起こして見れば、ジャーファルの姿



「ジャーファル…?どうしたんだ?」
「いえ、怪我…完治しましたか?」


「あぁ、十分すぎるくらいに…身体が鈍りそうだ……シャル居ねぇし…どう?俺とやらねぇ?」

「ふふ、望む所です」



すたっと目の前に降りれば、目を見開き驚く様子の相手を見て微笑み
袖を合わせたままの彼、不敵に笑ったルシリス

互いに一気に間合いを取れば、自身の武器を構える


生暖かい心地いい風が吹き抜け、先に動いたのはジャーファルで



「はっ!」

「っと、危ない危ない―――」




まだ馴染んでいないために、発動は出来ないがフラウロスの黒剣を抜けばジャーファルの武器双蛇鏢を躱せばそのまま間合いを詰め剣をひと振りするも
軽く躱して、腕に一発彼の蹴りが入り眉間にシワを寄せれば
驚いて間合いを取って直ぐ、心配してくる相手だが


気を抜いたら終わり



「だ、大丈夫です…―――ッ!?」



「気抜いたら死ぬぞ」




手に握った鏢で防いだ彼
金属同士がぶつかり合い、鍔迫り合いになれば

ギチギチと音を立て




「んー…飽きたー」
「はぁ!?」

「飽きた。これ以上やったら、吹っ切れそうだし――…」

「はぁ…全く……では、昼食にしますか?」
「いやー?要らない」


剣をしまえば微笑み、ジャーファルに近付きそう伝え
大きく伸びをすれば

あー、どうしようかな…シン達まだ帰ってこないしアリババ君の剣の稽古でもつけようかな。


半年間、彼らと全くあっていなかった。


そこまで広くないはずなのだが、何故か全く会わなかった。





「アリババ君たちは、元気にしてるのか?」
「えぇ、最初の頃はあまり食べ物も食べてくれなかったのですが……最近ではよく食べてくれていますよ」

「そっか、それなら良いんだ。それよりシンたちいつ帰ってくるんだ?」

「明日、明後日くらいでしょうか…」



そんなにかかるのか…。
あ、待ってるの…っつか、別に待ってないからな?あんなやつら。スパルトスならまだしも
ほかの二名は待ってない、うん、待ってない

歩き始めようとすれば…



「さっきから、何一人言喋ってるんですか?」


「あ、いや…何でも無い」
「それにしても…怪我が完治してよかったですね、あんなに酷かった…のに」
「はは、少しヘマしたからな。ジャーファルには世話になったよ。ありがとう」

「っ……当然の事でしょう…」


「ん?」



首を傾げた。
あー、そうか俺一応此処にお世話になってるわけだし、この国に一応は貢献しなきゃいけない立場だから
身体壊されたら困るよな、そりゃ。

一人頷けば、ありがとう。とそう伝えて自分の部屋へと戻った











 ― ◆ ―





「「ルシリス様!!」」
「…………様…」



おっと、忘れてた…この国の王宮に仕えるこの三人組を

部屋に戻ろうと、歩いていると部屋の前に見知った顔が三つ



「見ないうちに大きくなったな三人とも…」




その三人の笑に顔が引きつった、何せ彼女たちは俺に女装させて遊ぶ俺に付けられた侍女たちだから。
いや、別に嫌じゃないんだ。
この三人は。けれど、女装させて遊ぶのだけは避けて欲しい…と毎回願うもそれは一瞬にして破壊される
だからこそ、今回も諦めて部屋へと入った




「そろそろシンドバッド様たちも帰ってくるわけですし!!」
「その時のための、お着物決めましょう!!」
「……ルシリス様…」


「……そ、うだな。でもそれは…当日で良いんじゃない…か?」


「「ダメですよ!!」」



流石三姉妹上の二人…。末の子は静かでいいが…趣味と強引さはあの二人に劣らない。

女物を両手にもち、近付いてくる三姉妹に
苦笑すれば、そのまま結局着替えさせられる。



「ふふふ、流石ですわ…お綺麗で」
「怪我をして帰ってきたときは、それはもう…心配いたしましたわ」

「君らの心配は、俺の体の心配だろう…」
「………違う…お姉、たち…泣いてた…」

「?泣いてた?」


「わ、わわ!!何言ってるの!」


慌てて末の子の言い分を取り消す一番上の姉ルイス、それに表情こそ変わらないものの楽しげなリリイ、それを見守りつつ小物選びをするレティス
今のルシリスは何処からどう見ても女にしか見えず、胸の部分は何時も見えない様になっているため絶対にバレない。

そんなのも、数々の実績から言えることで



嬉しくないけれど。

シンを喜ばせて何の得が俺にはあるんだ…と溜め息を吐きながらも、楽しそうな三姉妹を見て窓から外の景色を眺める。
海が見える位置の部屋をもらったために、海がとても綺麗に見える。


今着ているこの服で、シンが帰ってきたとき迎えろという彼女たち。アラジンやモルジアナやアリババくんがいるのにも関わらずだ
これじゃあ、ただの恥さらしにしかならない。
謝肉祭の時だって、あれは女の人の役目なのに面付けて俺にまで花配れって言い出すし、本当…。
シンが頭おかしいんだな、うん分かった。





 

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