月影と愛されし君 magi

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間一髪、ジュダルちゃんは助けられたわ…でもっ…なんで


なんで、ルシリスの姿が見えないの?
下を探すけれど何処にも見えない、助けられなかった…?



ぐるぐると頭の中にそれが回る


「姫、あの方ならきっと大丈夫でございます。」
「っ、そう…ね……」


横からそんな彼女を察したのか、一つの声がくる
閻心に抱えられた、怪我だらけのジュダルを見る。眼下には巨大なジンの姿



「あらあらぁ…なんなのぉ?あの化物は…随分と私たちのかわいいジュダルちゃんをいじめてくれたみたいじゃなぁい?」



その声に、一同全員が絨毯の上の人間に目を向ければ
月をバックに、巨大な絨毯の上の少女と大きな陰と男の姿が目に映る。


しかし、下を見ても絨毯の上にもその何処にもルシリスの姿はない。




「間一髪助ける事が出来ましたね。」

「でも、大怪我してるわぁ。……あの方も、見当たらない…。ちょっとぉ夏黄文、ジュダルちゃんをちゃんと治しなさいよぉ。死んだら一大事よぉ。」
「分かっておりますよ姫君。彼は我々の大切な「神官殿」なのですからね。」


その下では、騒ぎが起きていたがそんなのはお構いなし



すると、巨大なそれは動き出し手を赤く光らせ構えている



「何よぉ、まだやる気なのあの化物。じゃあ、私が相手になるわよぉ。」
「気をつけてくださいね、姫君。」

「大丈夫任せてぇ。あなたは治療をお願いねぇ。」




ルシリスの…仇よ、化物。
一歩前に出れば簪を抜き取り、ジンを呼び出す呪文を唱える



「悲哀と隔絶の精霊よ、汝と汝の眷属に命ず…我が魔力を糧として我が意志に大いなる力を与えよ!!出てよ、ヴィネア!!」



簪を高く振り上げれば、絨毯から降りても空中に浮く。そして空気中から集めた大量の水で出来た巨大な蛇の様な龍のようなそれが身体を覆うように現れ
それと同時に、下にいた巨大なジンは動き出し

同じ高さまで、飛んで来た

しかし、それは大きく手を広げジュダルにやったように手を伸ばし握り潰すようにして構えると


一気に握りつぶそうとしてきた



「熱っ…熱魔法…水の膜がなかったら危なかった……折角集めた私の水が、蒸発しちゃうじゃない!!この死に損ないがぁあああああ!!!」




周りの水が簪に全て集まり、包み込めば腕をもそれは飲み込み腕には魚の様に鱗と鰭のようなものが現れ
簪は巨大な武器へと変化する。


ジュダルちゃんと、ルシリスの仇なんだから―――。


巨大な武器を構えれば、身体事回転をかけてそのまま巨人の身体を貫く。


あっさりとそんな事をやれば、難なく地面に着地をする。
巨人には巨大な穴が空き、そのまま弾ける様に消えれば小さな笛の中へと消えていった



「どうよ!?夏黄文!!」
「流石であります姫君」
「ジュダルちゃんの具合はどぉ?」

「応急処置はしてはおりますが、治すには、きちんとした施設が必要でありますね。」

「じゃあ、早く行きましょぉ。」



治すためにはちゃんとした施設が必要ならば、戻って治さないと…ルシリスを本当は探したいところなんだけれど。
そう言うなり、甲を返そうとするも

夏黄文に肩を引かれれば、一つの光が真横を通り抜ける



「何 あなた?気に食わないわねぇ…私たちは、化物に襲われた身内を助けただけよ?」
「違う!!」



急に現れた小さな子供は、そう言った

気に食わない、それが一番の今の気持ち。



「ウーゴくんは、みんなを、僕を守ろうとして戦っただけなんだ!先に手を出してきたのはその人だ!!」
「…………そう…じゃあ………あなたがあの化物の主なのね?じゃあ、下にいるそいつらも…あの化物の仲間なのね?」


「いかが致しますか姫君。」



鋭く少し下にいる子供を睨みつければ、下にいる沢山の人間を見て
後ろからの夏黄文の声に、右手を上げる



「片付けるしかないわねぇ。閻心、閻体、閻技、やっておしまい!!」



そのまま、それぞれの名を呼べば右手を振り声を張り上げ命令すれば一気に飛んでいくそれ



「この子供は私が片付けるわぁ。そのゴミたちは三人で…………」



一斉に人間たちに襲いかかる、迷宮生物軍団の者たちを尻目に、地面に降りれば
子供を見て、指を指す


叫び声が沢山上がる



「みんな楽しそうねぇ!私もここからが、本番よぉ。」
「悲哀と隔絶の精霊よ…汝に命ず、我が身に纏え、我が身に宿れ…我が身を大いなる魔神と化せ、ヴィネア!!」




そう言えば武器を持った右手を振り上げる。
すると、武器から水が出てきて身体を覆う事に、その姿を変えてゆく

しかし、その腕を急に握られ止められ



「やめてくれ、お嬢さん!」
「何よあんたッ!!?」


!?
腕を見れば、魔装が溶かされるように消えてゆく


なんで…!?私の魔装が溶かされてゆく…!?ま、前に一度だけあの方にされたのと…同じ?!

混乱する中、腕を掴まれたままそのまま力が抜ければ地面へと座り込んでしまう




「お嬢さんは、煌帝国の姫君とお見受けしたが…」

「……あ、あなた…誰…!?」
「私はシンドバッド。シンドリア国王、シンドバッドだ。」



その目と目が合えば、大きく胸が高鳴る音が自分で聞こえる



「あ……あなたがあのシンドバッド王…?」



腕は掴まれたまま、紅玉は一瞬固まる



「……何時まで握ってんだ、変態が!!」
「!?」

「いでっ!!」

「ったく、油断も隙もない……大丈夫か?紅玉」




そこに現れたのは、今まで自分が探していた人物で。驚けば目を見開きそのまま抱きついた。
しかし、そんな紅玉を受け止め優しく抱きしめれば頭を撫でるルシリス

どうして、何処に居たの



「吹き飛ばされて、な…」



心を読んだかのその言葉、良く見れば苦笑を浮かべているその額からは真っ赤なその瞳と同じような色の血が流れているし
それ以上に身体中傷だらけな上に服もボロボロ。
そんな相手の様子に、慌てて離れれば



「流石にこんな所で、金属器発動なんかしたら危ないだろ」

「だ…だって…あの子が…!」
「アラジン、杖を下ろせ」


「大丈夫だ、「ジン」はこの程度じゃ死なない。君の友人はまだ生きている。それに、そんなに激昂してしまって戦うなんて、君らしくもないんじゃないか………?」
「…………」


「姫君。私は現在一国王として、ワケあってこの国に滞在しているのです。もし貴女もそうならばしかるべき場所でお会いしたいものだ。」

「今日はもう自分の場所に帰れ…。」




相手をちゃんと見れば、頬に着いたゴミをとってくれて真っ赤になれば腕を合わせ服の袖で顔を隠す
そうすれば、腕を下げたのかそれ以上は触ってこない。

嫌だと解釈されたのだろうか


ルシリスのその言葉に、甲を返す



「……………わかったわ、よ………皆の者。」

「?」

「帰るわよ。」
「えっ…?姫君しかし…」
「いいから、今日は帰るのよっ!!」

「…………」

「いいことっ!?別にあんたに言われたから帰ってやるわけじゃないんだからッ!!あの方に言われたからよ!!」





ちらっと見れば微笑んでくるその人、急いで絨毯に乗ればその場を逃げるように後にする。
あの方、助かってた…でもかなりの怪我…
出来るなら、連れて行って夏黄文に治療してもらいたいのに…

なんなのよっ、あの男…あんな男に…私……






 

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