月影と愛されし君 magi

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霧の団の団員たちが集まるこの場所。
がれきが高く積まれた中心のそこへ立つ、そうすれば一気に視線がこちらへと向く。今日の交渉は
自分たちのこれからはどうなるのか、とそう訴え掛ける目

アリババは今日の自分の不甲斐なさを思い出し、自然と俯く



「諸君、結論から言おう。本日の会談にて、交渉は決裂した。」



「!!」



そのシンドバッドの言葉に、全員が目を見開き絶望する


「要求は完全に跳ね除けられた。国軍と我々の対立は決定的なものになってしまった。」
「そ……そうか………」

「俺たちはもうお終いだ…………」


「何がお終いなんだ?そもそも、君達の戦いの終わりは何だ?」

「…………?」


ゆっくりと、そう語りかけるシンドバッド。
それに耳を向ける、霧の団の団員たち



「貧しさを抜け出すこと。守るべき家族を養うこと。そんな崇高な目的を持たん奴もいるかも知れんが、各々の目的のために、盗賊まがいのやり方しかなかった君たちが、今日初めて、国王に正面から話を持ちかけた。」




シンドバッドがそう話し出せば、全員がその話を熱心に聴き始める
流石、国王。なんて褒めた
それだけの話術があるからこそ、国王になれたんだろうし

真っ黒で真っ白い、人間なんだと…分かる。


黙って話を聞いていると、上からひとつの気配。それに気づいた男が指をさし声を上げる







「お―――――いシンドバッド――――!!!」

「「!」」




大きな声が一つ、漆黒の空白く輝く満月をバックに真っ黒いそれが声を上げる

それは、音もなく上の穴から目の前まで飛び降りてくる。



「よっ、バカ殿!ルシリス!ここで何してんの?」

「ジュダル、お前アブマドの手先として来たのか?それとも煌帝国のか?」
「………あ?」










 ― ◆ ―





「ああ!違う違う!正直俺そんなのどうでもいいから!」

「貴様ら、この国で一体何をする気だ?」
「親父どもの考える経済どうのってのは、俺にはキョーミのねー話だからな…そんなことよりわかってんだろ、シンドバッド?俺が好きなのは……戦争だよ」



そう言ったジュダルは、シンドバッドの次にルシリスを見た。
そして、目を細めてからまた

口を開き自身の、今いる国の話をする



「強いんだぜ!俺のいる煌帝国は、兵隊も沢山いる、「迷宮攻略者」の将軍もいる、迷宮怪物軍団だっているんだぜ!すっごいだろ!」

「貴様ら…!」

「ルシリスが居れば、後はお構いなしだな!俺はルシリスが大好きだ。俺のものになれば良い…ずっとそばに居てくれれば俺は何もいらねぇ」
「…………」
「なぁ?あ!勘違いすんなよ!俺が一番組みたいのはシンドバッドとルシリスお前らなんだぜ!煌帝国の皇帝はどうも気に食わなくてよ〜〜」



淡々と話し続けるジュダル


ルシリスはただそれを聞いているだけで、シンドバッドはちらりとルシリスを見たが、表情のないルシリスに声を掛ける事など出来ず諦め




「だからいい加減俺と組んで、世界せーふく目指そうぜ!」
「何度も言ってるだろ。俺はお前らの操り人形にはならん」

「俺も…だな。ジュダルと組むのは楽しそうだ、けど…その後ろにいる人間に俺は手は貸さない」



「…………っ…にしてもさぁ、なんなのこいつら?ゾロゾロと…」




少々の同様。

一つ、周りを見れば一人の人間がジュダルの目に留まる。
すると、ジッと猫が獲物を見つけたかの様な目で見る




「…あれ?何コイツ?シンドバッドよぉ…こいつの周りのルフ、変だよ。こいつ何なんだ?」
「…お前と同じ「マギ」だよ。」


「………はぁ〜〜!!?こんながチビが「マギ」ぃ〜〜!?ウソだろ〜〜〜〜!?」

「だって「マギ」ってのはすっげーんだぜ!!世界を変えるためにルフが送り出す、創世の魔法使いにして最強のマゴイの使者。それが「マギ」なんだぜ!!そんなのが俺の他に…そうそういてたまるかよ!?」
「…彼が「マギ」だからお前も反応したんだろうが」



大声を上げたジュダルに驚くアラジン、しかし怯む事なくジュダルを真っ直ぐに見て構える。
が、話し終えたジュダルは何を思ったのか、満面の笑みを浮かべ振り返りアラジンを見た



「ようチビ!俺、ジュダルお前は?」

「ぼ、僕はアラジン。」
「そっか、アラジン。「マギ」同士宜しくな!」

「………」


きらきらとした笑みをアラジンに向け、握手を求めるように手を差し出すジュダル



アラジンは真っ直ぐ手を差し出すが―――…ゴンッと鈍い音を立ててアラジンの左目を殴る。あまりの勢いに、アラジンの指の隙間から見える左目は青紫色に腫れている


「!」
「ジュダル!!」

「おいお〜〜い、こんな鈍臭い奴が俺と同じとかマジかよ〜〜!シンドバッドよ、まさか俺を差し置いて…こんな奴と組む気じゃないだろうな…?」



近付けば、アラジンの左目に触れて怪我の手当をすると

アリババもモルジアナもアラジンの目のことを心配し、近寄ってくる


「そうだチビ。お前が本当の「マギ」なら、他にも王候補を連れてんだろ?一人か二人ぐらいその辺にいんだろ?なぁ、チビ!お前の王候補を出せよ!」



しかし、アラジンはその言葉に返答しない。
そんな事は聞かずとも、ジュダルにはわかるはずで



「なんだよ、だんまりかよ?いいよ〜じゃ、自分で探すから〜〜………みぃ〜つけ〜〜…………」




ぐっと前かがみになれば、ぱっと顔を上げるジュダル
瞳の色が変わるのが見えた






 

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