Seven Deadly Sins

□20夜
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勝手に決まったイデア国での婚姻の宴から早く、ひと月が過ぎた。

特にこれと言って何も無く、それでも届いてくる様々な貢物やら何やら。食べ物だったり、物だったり。
ひたすらに、退屈な…それでいて少し此処が心地よく感じるようになって来た。



「……聞いてますか?」
「…?」
「ですから、少し一緒に散歩に行きませんか…と…」

「ふふ、そういうことですか。良いですよ?」


ぼーっと窓辺に頬杖をつき見ていると、隣からの声に?を浮かべると苦笑しながらもう一度言った皇子。
それに微笑み応えると、立ち上がった皇子の後に立ち上がり軽く髪を整え直した。
入り口にいた銀嶺が頭を軽く下げた。

そのまま二人で街へと降りると、騒ぎになりかねないからと変装をして城下へと下った。



「今日も何もないようで何よりだ…」
「そうね、綺麗」


二人で並んで街を歩いていると、ふと立ち止まったヴァシュード。
少し先に気付かずに歩いていた紅藜が振り返ると、直ぐに走って戻って来たのだがその手には袋が一つ。


「何か買ったの?」
「後で、見せますよ!」
「そう?ご飯、食べない?お腹すいたんだけど…」
「あ、はい!この先に俺がいつも世話になってる店があるので、そこで!こっちです!」



嬉しそうに笑いながら話すヴァシュード。
小さな子供の様な笑顔と態度、自分よりも少し背が高いのだが純粋な相手に自然と笑みが零れる。



「紅藜さん笑ってくれた…」
「?」

「最近、寂しそうにしているから…国に帰りたいんじゃないかと…」

「そんなことないけど…そんな風に見えた?」


じゃあ、俺の気のせいですね!と言って店に着くとそこで食事をしていると
店の扉が大きな音を立てて開かれ、大男たちが沢山入って来た。

偉そうにふんぞり返り、席に着くと店主に偉そうに注文をしている。
店の客は半数が外に逃げていき、残った人たちも見て見ぬふり




「ああ?お前何俺にガンつけてんだ?」
「ひっ、み、見てませんよ!!?」
「見てませんよ。だって、ただの下っ端の人間の癖に偉そうに」
「俺らはこの魔法道具を手に入れた選ばれた人間なんだよ、お前らには扱えねぇ代物だぜ、いいからとっとと飯を出せ!!腹が減ってるんだよ!!!」


魔法道具…ねぇ。
最近風の噂では、魔法道具が至るところで相次いで確認されているらしい。
それに加え、そのもの自体も金属器と一緒に発掘された物とは少し違うそれに似せて作られたものらしく
けれども、力は殆ど同じとか…。

どうしようかと目を細め、食事を口に運ぶと突然大きな音を立てて椅子が引かれる音がした。しかもそれは、自分の目の前の席からの物



「この国に居るのなら、それなりの節度を持ったらどうなんだ。此処はお前らみたいな人間の来る場所じゃない、他の客に迷惑かけるんなら出ていけ!!」
「はぁ?何でお前みたいな奴に指図されなきゃならねぇんだよ」
「俺たちとそんなただの剣でやり合おうっつーのかよ、笑えるなぁお前ら!!」


今まで聞いた事の無いような低い声で、男達に注意をしたヴァシュード。
そんな態度の変わりように目を丸くした紅藜。
しかし、魔法道具を持った男たちが引き下がる訳なく数でも力でも上の奴らはざっとみて20〜30人。その人数が下品な大声で笑いだした。

どうするんだか…あの人数相手に出来る程力があるようには見えないし、金属器使いでもない…。



「恥ずかしくないのか?そんなちっぽけなモノに縋って、自分を大きく見せて…子供にも出来るぞそんな事。」
「さっきから聞いてりゃ、いい気になるなよ餓鬼」

「キャッ、だ、大丈夫ですか!?」



立ち上がった男はガタイが良く、ヴァシュードよりも大きく頭に来たのか男は目の前に居るヴァシュードを殴り飛ばした。
女の店員の足元に飛ばされ、悲鳴と共に心配をされるが大丈夫だと笑い切れた口の中の血を吐き出し
もう一度男の前に出ようとするものだから、それを止めた。



「紅藜さんは、下がってて下さい!」
「殴られた本人が言う?それに…良いから見てて。」

「おやおや?女に助けられたのか?兄ちゃん」


「そういうお前らは、その女にやられるんだよ」

「はぁ?」
「お嬢ちゃん、嘘はいけねぇぜ?そんなひょろっちい身体で何が出来るんだ?」
「それに、そんな男じゃなくて俺らにしろよ、優しくするぜ?」
「ギャッハハハ、それはねえだろ、お前何人女壊してるんだよ」


「ごちゃごちゃうるせぇな、黙れって言ってんだろ」



目の前で煩い男たちを見て、そういうと胸を一撫でし紋が光ると出て来る剣を一つ掴み引き抜いた。
紅藜の回りに起きる風に、ローブが揺れ一振りで男たちが店の外へと吹き飛ばされた。

店の修理費は、後で銀嶺にでも届けさせるか。

今はそれよりも、この目の前の人間たちをどうするか……だな。



「いっ…てて何しやがるお前、お前も魔法道具使いか!?」
「……お前らのと何て格が違うけど?見せてあげようか―――…裁きの雷を堕とせ ベルフェゴール!」



今持っている剣をしまうと、空を見上げ
魔法道具から放たれた炎を軽々避けると、少し高い建物の上で胸を触ると曇っていた空がどす黒く曇り紋が光り
鉄扇を一対引き抜くと、空が光り音を立て始め流石にやばいんじゃないかと逃げようとした男達に片方の閉じた鉄扇の先を向けると
空から雷がその男達をめがけ、唸りながら落ちて来た。

勿論、雷に打たれボロボロになって伸びた男達。鉄扇をしまうと空は晴れ


そこへ、城の兵士たちがやってきて男たちは連行された。


「何事だ!!?」
「こ、この男達が!!」
「押し入って来たところをあの方達が……あれ?」
「誰も、居ないが??」
「あれっ、さっきまで居たのに…」

「お前ら、こいつらを連れて行け」





 ― ◆ ―


少し街を離れた小川、懐から手拭を濡らしヴァシュードの傷口を拭った。
軽く熱を持っている様で、少し考えてから胸に手を当てるとふんわりと微かに光る矢が一本出て来たが紅藜が優しく撫でる様に触るとそれは瞬く間に小さく細くなった。


「動かないで…ジッとしてれば直ぐだから」


そういうと、それをそのまま傷口に刺した。
しかし、痛みはなくじんわりと傷が温かくなり痛みは完全に引き怪我も跡形もなく消えた。


「っ……怪我、が…治った…」
「どれも、あの馬鹿達が持ってたモノよりも上の金属器によるもの…」
「……金属器を持っていたんですね、さっきの二つも?」

「ええ、それより早く城に戻らないと…騒ぎがあったからもしかしたら探されてるかもしれない…」



あっという間に治った怪我に、驚きつつそれでいて落ち着いているヴァシュード


「そうですね、先程はありがとうございました紅藜さん」
「………そろそろ、そんな他人行儀じゃなくてもいいんじゃない?仮にも、一応は結婚していることになってるんだし…」
「あっ、そうですね!えーと、よろしく紅藜」


「ええ、よろしく。ヴァシュード」



戻らないと、と城へと戻ると案の定こちらを探していたらしく
白々しく嘘をつくと、直ぐにバレたのだが流石王なのか笑って許してくれた。





 
 

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